「技術のお部屋」の紹介文よ。

 

仔猫といっしょに

 
−キャスト−
ミリネール :  菊池志穂
   
フォルシーニア :  井上喜久子
クレアリデル :  沢海陽子
メルキュール :  根谷美智子

−場面設定−
「デジタルアンジュSS  サウンドトラック」 ミリが仔猫を飼いはじめた後
 


 

ミリ 「うふふ、よく来てくれたわね、ベスティアさん? ここはね、
   『電脳天使』のデータをパソコンで利用しちゃうための情報が、
   たっくさん集めてあるお部屋よ!
   うふふ、わくわくするでしょう?
   欲しい物は、なーんでも手に入るのよ。
   画像抽出法や音声抽出法。天使たちの裏の裏まで教えてあげる!
   抜き出したデータをネットで公開すれば、アナタも立派なベスティアよっ!」
   
クレア 「こら、何やってんの?」
ミリ 「あ、クレア姉ちゃんとメル姉ちゃん…」
メル 「もう、ミリったら。」
フォル 「いけませんよ? ミリネール…」
ミリ 「フォル姉ちゃんまで…」
クレア 「気を付けなきゃだめでしょ? 著作権法違反になっちゃうのよ?」
ミリ 「全然構わないもんっ!」
クレア 「なんですって?」
ミリ 「だって、人間はみんなベスティアなんだから、
   自分の欲のままに、したいことをしてしまえばそれでいいのよっ!
   著作権だかなんだか知らないけど、全然気にしないんだからっ!」
フォル 「そ、そんな……だめです、そんなこと。」
クレア 「ふぅん、ベスティアリーダーの考えそうなことね?」
ミリ 「ふーんだ!」
メル 「もう、ミリったら過激なんだから。」
フォル 「ねえ、ミリネール。お願いですから、そんなことはなさらないでくださいな。」
ミリ 「アタシは‘堕天使’、ベスティアリーダーなの!
   ‘天使’の指図なんか受けないわ!」
フォル 「ミリ……」
クレア 「まったく。」
ミリ 「ふん!」
クレア 「メル? あんたからも何か言いなさいよ。」
メル 「あらん? あたしは別にベスティアがたくさんいても……ねえ?」
ミリ 「そうよ、当たり前でしょ? メル姉ちゃんも
   ベスティアリーダーなんだから。」
メル 「あたしは‘リーダー・オブ・リーダーズ’よ!」
ミリ 「はいはい。」
フォル 「そんな……」
クレア 「…………メル?」
メル 「はい?」
クレア 「そういうこと言うと……」
メル 「言うと?」
ミリ 「言うと?」
クレア 「ワタシ、メルのこと、大っ嫌いになるわよ?」
メル 「いやあん、クレアさぁん!」
ミリ 「ちょ、ちょっと、メル姉ちゃん?」
メル 「ミリ! やめなさい!」
ミリ 「なんでメル姉ちゃんはクレア姉ちゃんの言うことばっかり聞くのよ!
   アタシたち、堕天使と天使なのよ? 馴れ合ってどうするのよ、もう。
   そんなんだから、‘族長(おさ)’失格って言われるのよ!」
メル 「いいからやめなさい。あたしがクレアさんに嫌われたらどうするの?」
ミリ 「望むところよ!」
メル 「うっ…」
ミリ 「アタシ、本気だもん!」
メル 「そ、そんなこと言わないで、ね?」
ミリ 「ふーんだ!」
クレア 「ったく、だらしないわねぇ。全然言うこと聞かないじゃない。
   あなた本当に‘族長’なの?」
メル 「あ、ひっどーい、クレアさぁん。」
フォル 「ねえ、お願いです、ミリネール。
   ベスティアを増やすだなんて、そんなことおやめくださいな。
   だって、人類はきっといつか‘ベスティアではない人’になれるって
   わたしは信じておりますもの。」
ミリ 「フン、思い過ごしでしょう?」
フォル 「……それに、きっと貴也さんが悲しみますもの。」
クレア 「そうよ、貴也が怒るわよ?」
ミリ 「お、お、怒って、何なのよ!」
メル 「んー。英荘から追い出されちゃうかも?」
ミリ 「む!」
クレア 「ふむ、ベスティアリーダーが人間にそんなことをさせたら、
   貴也もあなたを許さないかもねぇ。」
ミリ 「フンだ。アタシ、構わないもん。」
クレア 「また、エルメスフェネックの中で一人で暮らすことになるのよ?」
ミリ 「か、覚悟の上だもん。」
クレア 「え?」
メル 「ちょ、ちょっとミリ、本気?」
フォル 「かなり、辛そうに感じてらしたのに……」
ミリ 「ちょ、ちょっと!」
フォル 「あ……」
ミリ 「またアタシの心を読んでたの?」
フォル 「ご、ごめんなさい…」
ミリ 「違反だっていたでしょう? 天使が堕天使の心を読むのは!」
クレア 「もう。堪えて(こたえて)いるんなら、無理しなきゃいいのに。」
ミリ 「今度は違うもん。本気だもん。だって!」
フォル 「だって?」
クレア 「だって?」
メル 「だって?」
ミリ 「アタシを追い出すような人間なんて、‘素因’ではいられないもの!」
三人 「あ!」
ミリ 「行くあてのないアタシを追い出したら、
   貴也は‘素因’でなくなっちゃうんだから!」
フォル 「そんな!……」
クレア 「そういうつもりだったのね……」
メル 「考えたわね、ミリ。」
ミリ 「どう? 本気だって分かったでしょう?」
フォル 「だめです、貴也さんはわたしたちの大切な‘素因’ですもの。
   それをベスティアにしようだなんて。」
ミリ 「堕天使にとっては、別に‘素因’なんて必要ないもん。
   ベスティアになってくれたほうが守りやすいわ。」
メル 「アンタ、まだ貴也のこと苦手なの?」
フォル 「いいえ、そんなことないですよね。」
ミリ 「う……」
フォル 「ミリは貴也さんのこと、大好きなはずですよ?」
メル 「え?」
フォル 「あの時以来、仲良くなりましたもの。」
ミリ 「う。」
フォル 「ミュウのことを貴也さんに頼んだ時……」
メル 「あ……」
フォル 「ミュウを飼わせてもらえるように、
   あなたが貴也さんに頭を下げたとき。」
ミリ 「ん……」
フォル 「あんなに感謝していたんですもの。
   ね? 貴也さんの事、お好きでしょう?」
ミリ 「う、うん……」
フォル 「うふふ。ねえ、ミリ? 考えて見てくださいな。
   貴也さんが‘素因’であったからこそ、
   仔猫を飼うことを許してくれたんですよ?」
ミリ 「な、なんで?」
クレア 「猫の毛の掃除、大変なのよ?」
ミリ 「し、しょうがないじゃん、猫だもん。」
フォル 「貴也さん、一生懸命お掃除してくださっているんですよ。」
ミリ 「え、貴也が?」
フォル 「だって、大家さんですもの。」
クレア 「もし貴也が自分のことしか考えない‘ベスティア’だったら
   猫をつまみ出してるでしょうねぇ。」
ミリ 「う。」
フォル 「でも、貴也さんはミュウを飼うことを許してくださったし、
   ミュウを追い出そうともしない。……どうしてだか、分かりますか?」
ミリ 「…‘素因’……だから?」
フォル 「うふふ。」
ミリ 「うぅ」
フォル 「ミリ? 貴也さんのこと、お好きでしょう? 今のままの貴也さんが。
   だから、そんなことはおやめくださいな。
   きっと、貴也さん、悲しみますもの……。
   自分がベスティアになることよりも
   『ミリがベスティアを増やそうとすること』を、きっと悲しみますよ?」
ミリ 「うぅ……」
クレア 「貴也には感謝してるんでしょ?」
ミリ 「してるけど、でも、アタシ……」
メル 「もう、意地っ張りねえ。」
フォル 「貴也さんがこの事を聞いたら
   きっと、ミリネールに‘頭を下げて’お願いすると思いますよ?
   『そんなことはしないでほしい。たとえそれがお役目だとしても、
   ベスティアを増やすようなことはしないでほしい』って
   ですから、そのお願いを聞いてあげてくださいな。」
ミリ 「そ、それはそうだけど……」
クレア 「そうそう、貴也に感謝しなくちゃね。」
メル 「クレアさんの言う通りよ。」
ミリ 「うぅ……」
クレア 「わかった? だから、もう悪さはしないことね?」
ミリ 「いいもんいいもん!」
三人 「ん?」
ミリ 「だったらこっちから出てってやるもん!」
三人 「え?」
フォル 「そんな…」
ミリ 「さ、行こ! メル姉ちゃん。」
メル 「え〜、あたしも一緒なの〜?」
ミリ 「当たり前でしょ? 堕天使なんだから。」
メル 「あたしはクレアさんと一緒にいたいのに〜」
クレア 「一緒に出てってもいいわよ。」
メル 「そんなぁ、冷たくしないでぇ、クレアさぁ〜ん。」
ミリ 「いいかげんにして!」
メル 「う!」
ミリ 「なんで馴れ合うのよ!」
メル 「ミ、ミリ……」
ミリ 「メル姉ちゃんのためを思ってしてることなのに!」
メル 「あ、あたしの?」
ミリ 「アタシはメル姉ちゃんに、ちゃんとして欲しいだけだもん!
   メル姉ちゃんがちっとも‘族長’らしくないから
   アタシが何とかしようとしてるだけなのに!」
メル 「お、落ち着いて? ミリ……」
フォル 「メルさんはちゃんとご自分のお役目を果たしていらっしゃいますよ?」
クレア 「そうよ、フォルの言う通り。」
ミリ 「フン!」
メル 「いい?ミリ。あたしたちのお役目はね。
   『天使たちに正しく審判を行わせる』ことなのよ? そして、
   人類がベスティアであろうと無かろうと、それを守ること。そうよね?」
ミリ 「うん……」
メル 「決して……ベスティアを増やすことではないのよ?
   ベスティアになるかどうかは、人間の判断にゆだねられているの。
   あたしたちが『干渉』していいものではないのよ?」
ミリ 「むぅ……」
メル 「そういうわけだから、ね?」
ミリ 「違うもん! そんなんじゃないもん!」
メル 「?」
ミリ 「メル姉ちゃんがしっかりしてないと、
   他の堕天使たちに、また地位を奪われそうになっちゃうんだから!」
メル 「えっ?……」
ミリ 「セフィが降りてきた時、メル姉ちゃんの強さは分かったの。
   メル姉ちゃんが‘族長’としての強さを、ちゃんと持ってるんだってこと。
   でも、他のベスティアリーダーたちはそんな風に思ってくれてないもん。
   他のベスティアリーダーたちが、メル姉ちゃんの地位を奪うために
   また降りてくるかもしれないんだよ?」
メル 「あ……」
ミリ 「そんなの、アタシ、嫌だもん!
   だから、メル姉ちゃんにはしっかりしていてほしいの!
   天使たちと馴れ合ったりしてほしくないの!」
メル 「ミ、ミリ……」
ミリ 「ね? 天使たちと戦うんだよ?アタシたち。
   メル姉ちゃんと一緒なら、アタシ、ここから出てってもいい。
   メル姉ちゃんがベスティアを増やすことが出来ないんなら
   アタシが代わりに増やすから、だから、ね?」
メル 「ミリ、あなた……」
ミリ 「メル姉ちゃん……メル姉ちゃんさえしっかりしててくれれば、
   アタシ、こんなこと……」
メル 「……」
ミリ 「メル姉ちゃん……」
メル (…………言えないわ……あたしは違うんだってこと。
   ‘族長’は天使とは戦わないんだってこと……
   言えない、あたしの本当のお役目を……
   こんなに慕われているんだもの……あたしには言えないわ……)
フォル 「ミリ、落ち着いて?」
ミリ 「メル姉ちゃんの、ばかぁ……」
フォル 「ミリ……。お姉さん想いのいい娘ね。ミリネール。」
ミリ 「うぅ……」
メル 「……」
   
  クレア(困っているみたいね、メル……)
  フォル(クレア姉様、どうしましょう……)
  クレア(ん? そう、ね……)
   
ミリ 「ねえ、メル姉ちゃん、ここを出て行こうよ。」
メル 「ミリ……あたしは……」
ミリ 「ねえ!」
クレア 「ほらほら、やめなさい、二人とも。」
メル 「あ……」
ミリ 「んぅ……」
クレア 「とにかく。とりあえず、出て行くことないわよ?」
ミリ 「え?」
クレア 「だって、どっちにしても、貴也は‘素因’だから。」
ミリ 「は?」
クレア 「たとえミリがどんな悪さをしても、追い出したりはしないわよ。
   まあ、ミリを叱ったりはするだろうけど、
   追い出すなんてこと、考えにも浮かばないでしょうね。」
ミリ 「あ……」
クレア 「そ。貴也はあんたたちを追い出したりしないわよ。」
ミリ 「そっか……‘素因’だものね……」
クレア 「安心した?」
ミリ 「むぅ……」
クレア 「ということで。」
ミリ 「ん?」
クレア 「ここを出てゆくのは‘仔猫だけ’ってことね。」
ミリ 「え!」
クレア 「ミュウを追い出すのよ?」
ミリ 「な、なに言ってんのよ! た、貴也がミュウを追い出したら、
   それこそ貴也はベスティアになっちゃうのよ?」
クレア 「あら?‘貴也が’追い出すんじゃないわよ?」
ミリ 「え?」
クレア 「‘あなたが’ミュウを追い出すの。」
ミリ 「な、何でアタシが!」
クレア 「だって。」
ミリ 「だって?」
クレア 「ベスティア、増やすんでしょ?」
ミリ 「うん。」
クレア 「貴也がやめるように頼んでも、でしょ?」
ミリ 「うん。」
クレア 「貴也が頭を下げても、でしょ?」
ミリ 「うん。」
クレア 「貴也が‘頭を下げて’頼むことをあなたが聞かないのなら
   あなたのほうも‘頭を下げて’頼んだことは、取り下げなくっちゃ。」
ミリ 「え!」
クレア 「だから、ミュウを飼うのは、もうおしまい。」
ミリ 「そんなぁ!」
クレア 「筋は通さないと。」
ミリ 「そんなの、いやぁ!」
クレア 「なんなら、ワタシが追い出してあげようか?」
ミリ 「だめだめだめ!」
クレア 「うふふ。」
ミリ 「そんなこと、絶対だめなんだからね!」
クレア 「じゃ、そういうことで。」
ミリ 「…………は?」
クレア 「悪さはしてはダメよ?」
ミリ 「あっ!しまった!」
クレア 「はい、決定ね。」
フォル 「まあ、よかった。」
ミリ 「あ、え、あの?」
クレア 「ちょろいものよね。」
フォル 「素敵です、クレア姉様。」
ミリ 「ひ、卑怯よ。ミュウをダシに使うなんて。」
クレア 「あら、そうかしら?」
ミリ 「クレアのバカ!」
クレア 「いい? 分かったわね?」
ミリ 「もう、知らない!」
クレア 「そ? じゃあワタシはこれで。」
メル 「あ、待って、クレアさん。」
ミリ 「ちょっと、メル姉ちゃん!……行っちゃった。」
   
  メル (ありがとう、クレアさん。)
  クレア(あら、何のこと?)
  メル (うふふ、なんでもないっ……)
   
ミリ 「もう、クレア姉ちゃんったら意地悪なんだから。」
フォル 「そんなことありませんよ。本当にお優しいお姉さま……」
ミリ 「どうしてそうなるのよ。」
フォル 「うふふ……。あ、ほら、あなたの‘恋人’がいらっしゃいましたよ?」
ミリ 「え?」
  みゃあう。
ミリ 「あ、ミュウ……」
フォル 「よかったですね。これからも一緒に暮らすことが出来て。」
ミリ 「あ、う、その、あの…………う、うん……」
フォル 「うふふ。」
ミリ 「んぅ、もう。笑わないでよ!」
フォル 「それじゃあ、わたしも失礼しますね?」
ミリ 「うぅ……」
   
  みゃあう。
   
ミリ 「もう、メル姉ちゃんのばか……
   クレア姉ちゃんなんかに、ほだされちゃって。」
  みゃあ…
ミリ 「ミュウ…。……アタシも…なのかな。」
  みゃう…
ミリ 「大丈夫よ、ミュウ。あなたを一人になんかさせないから。
   一人ぼっちは寂しいもん……
   あなたにはそんな気持ち、感じさせたりしないから、ね……」

 


 
−出典−
「デジタルアンジュSS」 「CDドラマ デジタルアンジュSS」

 

 

不正はダメなんだからね?

著作権を守ってね!

個人の利用範囲内だけよ?
不特定多数の人に配っちゃったり、
HPに掲載したりしちゃ、いけなんだからね!

そんなことしたら、ベスティアになっちゃうわよ?

わ、わたしは、たとえあなたがベスティアでも、
ちゃんと守ってあげるけど……

でも、今回だけは、ダメよ!
ミュウのためなんだから、ね?