ドラゴンアイズ ノベル
 

 第1話 : クリンド捜索
 
 

 アイネスはジランドル−Tに乗ってラングのシャトル港を訪れた。
そこからは徒歩でソールのアパートを探す事になったのだが、意外と簡単に探し出すとができた。
そのアパートが古びたように見える造りの超アンティーク様式の高級アパートだったためである。

アイネス(ホントに古そうな建物だわ・・・。でも中は最新式になっているらしいけど、とてもそうは見えないわ)

 アパートの前では長い髪を1本の三つ編みにした女性がエプロンをしながら竹箒(なんと古風な)で玄関を掃除していた。
とりあえずアイネスはその女性に話かけてみることにした。

アイネス「あのー、このアパートにソールという方がいるとお聞きして来たのですけど、おられますか?」

セリナ「はい、ソールさんならお部屋にいると思いますけど・・・。あっ、姫様?もしやアナタ様は‘生命ある宝石’様ですね?」

アイネス「あっ、はい。わたしはアイネス・ヴァレドゥープですけど・・・」

セリナ「まあ!感激です!こんなところで‘生命ある宝石’様に会えるなんて。
     あっ、申し遅れました。わたしはこのアパートの管理人をしているセリナ・フロールという者です」

 セリナはアイネスに会えたことで興奮した様子を見せた。
ちなみにセリナは25歳の未亡人である。

アイネス「ご丁寧にありがとうございます、セリナさん。ですがわたしのことはアイネスと呼んでくださいな」

セリナ「はい、アイネス様。
     あっ、この一角の犬・・・狼?わたし見たのは初めてです。この子がジエアなんですね。
     まるで私達のお話がわかるみたいに聞いていて、とても賢そうな顔をしていますね」

 セリナの興味が今度はジエアの方に移り、ジエアの頭をしきりに撫でている。

ジエア「グルル・・・」

 ジエアも誉められた上に頭を撫でられて満足そうな顔をしている。

アイネス「あのー、セリナさん。ソールさんのお部屋はどこでしょうか?」

セリナ「あっ、はい。すみません。すぐご案内しますね」

 アイネス達はセリナに連れられてソールの部屋を訪れた。
 
 
 
 

ソール「はじめまして、僕がソール・ネクトンです」

 案内されたソールの部屋はとても整頓されていて、とても男のひとり暮らしの部屋には見えなかった。
実はセリナがいつも片付けているからなのだが、アイネスにはそんなことは分からない。

アイネス「ソールさん。何かクリンド義兄様について知っていることがあったら教えて下さいませんか」

ソール「はい・・・。今回の帰国はクリンド様にとって、凱旋となるはずでした・・・。
     クリンド様は、従来のチルテニウム鉱石の加工法とは較べられないほどの超強度の新しい加工技術を開発、成功させたのです!
     もともとチルテニウムは宇宙空間船舶の外壁装甲板として利用されていますが、
     新たに開発された ‘メタ・チルテニウム’は従来のものより強度が向上するんです。
     ただ、その消費も増大してしまいますし、一度加工を施すと再生利用が不可能となってしまいますけどね。
     クリンド様はそれらを解決することが、今後の課題になるとおっしゃってました。
     しかしその加工技術を併せ持っていれば、銀河連邦に加盟したとしても、揺るぎない地位を確保できるのです!
     なぜなら‘メタ・チルテニウム’を使用して戦闘艦を造船したとしたら、この銀河系にはそれを破壊するすべがないのですから!
     それにチルテニウム鉱石はこのψ太陽系の特産ですしね・・・。
     それだというのに・・・。
     ‘アレ’は突然に起こりました。跳躍系の機関が使用されたのであれば、その兆候が現れるはずなのにです。
     それもなく、不意にクリンド様の航宙船が消えてしまったのです・・・僕の目の前で!」

アイネス「そんなことが起こりえるはずがありません!他には何かなかったのですか?」

ソール「はい・・・・・・あっ、思いだしました、クリンド様の航宙船が消え去ってしまった時、レーダーにもうひとつ船影があったのです。
     たぶん、快速艇クラスだったとおもいましたけど・・・。
     僕はこんなに広い宇宙の中で、こんな偶然もあるものだと感心したのですが次の瞬間には、クリンド様の船が消失してしまって・・・。      そして、僕も、一瞬その快速艇が怪しいのではと思ったのですけど。
     しかしさっきも話しましたが、快速艇がジャンプ船だったとしても何らかの兆候はあるはずなんです。
     いまだに、公表されていない新しい技術があったとか、特別な何かの力が作用したのではない限り・・・」

アイネス「それでは、いったい?」

ソール「待ってください。僕が言いたいのは、まず快速艇の搭乗者を見つけ出して話を聞いてみるということです。
     そうすればその時に快速艇のレーダーには、さらにもうひとつの船影がなかったかどうかを聞くことが出来ます。
     僕の船のレーダーと範囲とは交わらない部分があるでしょうからね・・・」

アイネス「わたし、その快速艇を捜します!ソールさん、その快速艇の行方をご存じないでしょうか?」

ソール「それが・・・このψ太陽系付近までは、船影が投影されていたのですが、僕も動揺していたもので、追尾をしていなかったんです。
     ビジュアル・レーダーの範囲を越えていましたから、船体も確認できませんでした・・・]

アイネス「・・・分かりました。0よりは1、あれば希望にはなりますもの。ありがとうございました、ソールさん」

ソール「いいえ、お役に立てて光栄です。ですがアイネス様、どうぞお気をつけて、無理はなさらぬように・・・」

アイネス「はい。お心遣い感謝いたします」

 アイネス達はソールに別れの挨拶をしてから部屋を出た。
 
 
 
 

セリナ「あっ!アイネス様。ソールさんのご様子はどうでしたか?
     ソールさん、中央から帰ってきてからはいつも暗い顔ばかりしていて・・・わたしにはその理由をおしえてくれないんです」

 アパートの玄関にはセリナがアイネス達を待っていた。

アイネス(セリナさん・・・もしかしたらソールさんのことを・・・)

セリナ「わたし・・・ソールさんを不安にさせるものから守って上げたいんです」

 アイネスは事のあらましをセリナに聞かせてあげた。

セリナ「・・・そうですか、そんなことがあったのですか。
     よかった・・・アイネス様には申し訳ないのですけど、そう思わずにはいられないのです!
     ソールさん自身に何かが起こったわけではなかったのですね・・・。
     ありがとうございます、エヌベルユの巫女様・・・!」

アイネス「うふふ・・・セリナさん、今いい顔をしてますよ」

セリナ「あっ!すみません、不謹慎でした・・・」

アイネス「うぅん・・・そんなことないですよ。でも、どうせならば、もっと幸せになってもらいたいわ・・・ソールさんとね」

セリナ「えっ・・・・・・」

 セリナは途端に赤くなった。

セリナ「・・・・・・わたしでは、ダメです」

 しかしすぐに悲しそうな顔になってしまった。

アイネス「どうして・・・あっ、ごめんなさい。これ以上は、もう聞きませんから」

 アイネスは立ち入った事を聞こうとした自分を恥じた。

アイネス「本当にごめんなさい、プライベートなことにまで口をはさむつもりはなかったのですけれど・・・。
      ・・・でも、いまが幸せなのなら、一度にいっぱい幸せを手に入れるよりも、ステキかも知れませんね。
      だって、幸せをいっぱい経験できるんですもの」

セリナ「・・・・・・はい」

 セリナは頷いてくれたが、悲しそうな表情は変わらなかった。

アイネス「そ、それでは、お元気で・・・さようならぁ!」
 
 アイネスは居たたまれなくなって、セリナに別れを告げて背を向けた。

セリナ「はい。アイネス様・・・きっとまた、おいで下さいませ!」

 セリナはそんなアイネスに声をかけて送り出してくれた。
 
 
 
 

 アイネス達はセリナと別れた後、ひとまずシャトル港まで戻って来た。

アイネス(大人の恋愛って難しいのね・・・。わたしってまだまだ子供なんだなぁ・・・。
      イケナイ!今はそんなことよりも快速艇のことだわ。今のところ義兄様の手掛りはそれしかないんだから・・・。
      ・・・その快速艇はψ太陽系を訪れて来たのかしら?
      よほどの旧式船でないかぎり、ψ太陽系を重力ブレーキとして使うために来たのではないと思うけれど・・・)

 そんなことを考えていたアイネスに1人の女性が声をかけてきた。

パルシア「初めましてアイネス様。わたくしはパルシア・ダルトンと申します。
      わたくし本日より、ソルダートから実技研修として、このシャトル港の案内嬢をつとめさせていただくことになったんです。
      でも、こんな早々にこの国の皇女様とお会いできるなんて、とても光栄です」

 パルシアはとても都会的で、アカ抜けた雰囲気の美しい女性だった。
その雰囲気のせいか、案内嬢の制服があまり似合っている様には見えなかった。

アイネス「ソルダートからですか?
      たしかソルダートからは航宙便がまだ出ていなかったと思うんですけど・・・、どうやって来られたんですか?」

 ソルダートは以前は国境を閉鎖している軍事国家であったため航路がまだ通ってはいないはずだった。
 
パルシア「友人の快速艇に乗せてもらって来たんですよ」

アイネス「快速艇!」

パルシア「グレイスティングという、とてもセクシーな船なんですよ。
      この名前は、ある妖精の名前からとって名づけたらしいのですが・・・それが、そのまま友人の性格だったりして笑えるんですよ」

アイネス「パルシアさん!その友達は今何処にいるんですか?まだここにいますか?」

 アイネスはその快速艇が例の快速艇ではないかと思い、勢い込んで尋ねた。

パルシア「えっ!?もうここにはいないと思いますよ。わたしを降ろした後すぐに飛び立って行きましたから」

アイネス「そうですか・・・。ではその友達と連絡は取れませんか?」

パルシア「それが、いつも何処かをフラフラしてる子で、きちんとした連絡先は決まってないんです。
      今回送ってもらえたのもたまたま会えてからでして・・・」

アイネス「そうですか・・・」

 アイネスはがっくりと肩を落とした。

アイネス(せっかく義兄様の手掛りが見つかったと思ったのに・・・)

パルシア「すみません・・・。お役に立てなかったみたいで・・・」

アイネス「いいえ、パルシアさん。ありがとうございました」

パルシア「・・・アイネス様。なんだか、お疲れのようですけど・・・。少しどこかで休んでいかれたらいかがですか?
      そうだ!わたし、ここの喫茶室のパフェがお気に入りなんですけど、そこで休んでいかれてはどうですか?」

 パルシアはアイネスを心配してか、そう提案してきた。

アイネス(そうね・・・たしかに疲れているし、そこへいって必要な情報を整理してみようかしら?)

 そしてアイネスはパルシアの提案に乗ることにした。

アイネス「ありがとうパルシアさん。わたし達、そこで休んでいくことにしますね」

 そしてアイネス達は喫茶室に行こうすると、

パルシア「あっ!アイネス様」

 すぐにパルシアに呼び止められた。

アイネス「はい。なんですか?」

パルシア「わたしの友達、ジェリスっていうんですけど・・・。きっと何処かでアイネス様とお会いする機会もありますよ」

アイネス「はい、そうですね。ありがとうございます」

 アイネスはパルシアにお礼を言って、再び喫茶室に向かった。

パルシア「近いうちにきっとね・・・」

 パルシアは口元に小さな笑みを浮かべつつ呟いた。
 
 
 
 

 喫茶室に着いたアイネス達は、コーヒーとパフェを注文した。
コーヒーはアイネスの、パフェはジエアの分だ。
パフェはジエアの好物で、他にはアイスクリームなどの甘いものも大好きだった。

アイネス「ん・・・ここのコーヒーは、美味しいわ」

 アイネスはコーヒーを一口飲んで素直にそう思った。

ジエア「ウゥゥゥゥゥゥオン!」

 ジエアも器用にパフェの器を手で持ちながらパフェにかぶりつき、満足そうな声をあげている。

アイネス「さて、いままでの情報を整理してみましょうか・・・?」

 アイネスはジエアに向かって話かけた。
ジエアに話かけても答えを返してくれるわけではないのだが、
ジエアはちゃんと話を聞いてくれるし、この方がアイネスも考えがまとまり易かった。
そのためいつもこういう時はジエアに話しかけるようにしていた。

アイネス「いい、義兄様は中央からの帰国途中で消息不明になってしまった。
       義兄様が中央から、このψ太陽系の外宇宙空間までは、別の航宙船でソールさんが同行していたの、
       それは突然の消失だったらしいわ。・・・その様子は、ソールさんが一部始終を目撃している。
       その時、ソールさんの航宙船のレーダーには、第3の船影・・・快速艇だと思われる船影が投影されていた。
       もし、義兄様の航宙船が遊重力崩壊場に遭遇したのであれば、とうぜん変移効果が記録されるわ」

 遊重力崩壊場とは星座標にさだめられていない、移動するブラックホールのことである。
航宙船の突然の消失などは、ほとんどがこの遊重力崩壊場が原因とされていた。

アイネス「自らが使用したのか・・・、
       または何者かの仕業によってジャンプ系機関が使用されて強制転移したのであれば、場がひずみ、観測できたはずなのよ。
       でもそれらは観測されなかった・・・。
      なんの兆候もなく、航宙船を消失する、またはさせられることは可能なのかしら?」

 アイネスはここで一旦言葉を置いて、思索にふけった。
そしてある考えが閃いた。

アイネス「サイオニクス・・・!Psi能力者によるレヴィテイションでならば、兆候もなく航宙船を消失させることが可能ではないのかしら!?
      ・・・でも、Psi能力者たちは、すべて中央にレジスタァされて‘フリーランス’となるはずだもの。
      もしも・・・もしもよ、自然発生ではなくて、人為的にPsi能力者となることが可能であれば、中央にもレジスタァはされないはず。
      でも、そんなことが可能なのかしら・・・人為的にPsi能力者になるなんてことが・・・?」

 アイネスはジエアに尋ねてみたがジエアは困ったような顔をするだけだった。

アイネス「はぁー・・・。でもいくら考えたところでこれらは全部ただの推測にしかすぎないわよね・・・。
       もしこれが誘拐だとしたら、その目的はおそらく義兄様が開発された‘メタ・チルテニウム’よね、きっと・・・。
      ‘メタ・チルテニウム’
      それがあれば、きっと義兄様は国民たちみんなに認められて、祝福されるわ。
      そうすればわたしはこのバロッキーをお返しして、義兄様が王位を継承することができる」

 そう考えるとアイネスの胸に期待と希望が湧いてきた。

アイネス「とりあえず1度お父様の所に戻った方がいいかもしれないわね。
      分かったことを報告しなければいけないし、新しい情報も入っているかもしれないものね。
      ・・・さぁ、ジエア。そろそろ行きましょうか」

 アイネスはパフェを食べ終えたジエアを促して喫茶室を出ていった。
 
 
 
 

 そしてシャトル港に戻ってくるとパルシアの姿はもう無かった。
会えなかったのは少し残念だったけれど、アイネス達はジランドル−Tに乗り皇城を目指した。
 
 
 
 

 皇城に着いたアイネスをピアンがさっそく出迎えてくれた。

ピアン「お帰りなさいませ、アイネス様。クリンド様のこと、なにか分かりましたか?」

アイネス「少しだけだけど分かったことがあるの。そのことをお父様に相談したいんだけど。お父様は今、お忙しいかしら?」

ピアン「ケイゼル様はどんなに忙しくてもアイネス様のためなら時間を割いてくれますよ。さ、参りましょう」
 
 
 
 

 アイネス達はピアンに連れられて執務室にやって来た。
執務室にはちょうどケイゼルとガールドリアがいた。
忙しくはなさそうな雰囲気だ。

ガールドリア「おぉ・・・アイネス、よく無事に戻ってくれましたね」

 アイネスの無事な姿を見たガールドリアが抱きしめてくれた。
別れてから1日と経っていないにも関わらずにである。

アイネス「お母様・・・。ちょっと大袈裟よ」

ケイゼル「どうしたんだアイネス。クリンドのことで何か分かったのか?」

アイネス「はい、お父様。実はクリンド義兄様が消息を絶ったときソールさんの船だけじゃなくて別に快速艇がいたらしいの。
      でも、その快速艇が今どこにいるのかが分からなくて・・・他にもう手掛りがないの・・・」

ケイゼル「そうか・・・。ではアイネス、先見の部屋を訪れてみなさい」

アイネス「先見の部屋?」

ケイゼル「そう。このψ太陽系の最内周惑星―永霧の都。そこには先見の部屋というものがあり、このψ太陽系の先見師様がおられる。
      そこへ行って、その先見師様に尋ねてみなさい。きっと道を示してくれるはずだ」

アイネス「はい、ありがとうございますお父様」

ガールドリア「あなた、でもあそこは・・・よろしいのですか!?」

アイネス「お母様?先見の部屋には何かあるのですか?」

ガールドリア「・・・先見師様は常に物忌みなされているので、お伺いがするためにはその都度覚醒をしていただかなくてはならないのです。
        それは・・・先見師様の命数を縮めてしまうことになるのです。
        ですから、いにしえの取り決めによって、国主在主中に一度しか、国主は先見師様にお会いすることが許されていないのです」

アイネス「そうだったんですか・・・。でも本当に良いのですかお父様。本来はお父様の権利ですのに・・・」

ケイゼル「良いのだよアイネス。ワタシの権利でお前が使うといい。ワタシが‘そう’したいのだからね。
      それから先見師様にお会いするためには、ロゴナの国主の先見師様覚醒の同意も必要だ。
      永霧の都に行く前に、まずロゴナを訪ねなさい。
      ただ、ロゴナは最近なにか良からぬことを企んでいると聞く、十分注意するのだよ」

アイネス「はい、ありがとうございますお父様。それではお父様、お母様。行ってまいります」

 アイネスは元気に2人に手を振って出ていった。

ガールドリア「アイネスがクリンドと結ばれてくれたら・・・わたくしの悩みもなくなるんですけどねぇ・・・」

ケイゼル「そうだな・・・。そうなればワタシも今よりもっとのんびりできるのにな・・・」
 
 
 
 

 皇城の外に出るとピアンが待っていた。

ピアン「アイネス様、お話は終わったんですか?」

アイネス「うん。今からロゴナまで行って来るわ」

ピアン「えっ!アイネス様、もうお出かけになるんですか?今日こそはアイネス様のお美しさの秘密を教えてもらおうと思ってましたのに。
    アイネス様は何か特別な美容法もなさっているのでしょう。だって本当に‘生命ある宝石’のようなんですもの・・・。
    あたし、毎晩ウォルタの乳風呂に入って、ロドの蜜を髪に塗っているのにちっともアイネス様の美しさに近づけないんですよ!」

 ピアンは一気にまくしたてた後、アイネスを見てうっとりしている。

アイネス「ごめんねピアン。それはまた今度ね」

 ピアンのおしゃべりに付き合うと長くなるため、アイネスは早々に切り上げることにした。

ピアン「きっとですよ。約束ですよ!。絶対ですよ!!」

アイネス「うん約束。じゃ、行ってくるわね」

ピアン「はい、いってらっしゃいませ」

 アイネスはピアンと別れ、ジランドル−Tに乗ってミウィを目指した。
ロゴナにはジランドル−Tの装備では行けないため、ミウィでジランドル−Uに改装しなければならないからである。
 
 
 
 

 そしてミウィに到着したアイネスはすぐに‘機械仕掛けさん’に話しかけた。

アイネス「機械仕掛けさん。すぐにジランドル−TをUに改装して」

機械仕掛けさん「べつに構わないが、どこに行く気なんじゃ?」

アイネス「ロゴナよ」

機械仕掛けさん「あんなとこに何の用じゃ?」

アイネス「永霧の都の先見の部屋へ行って、先見師様にお会いしたいんだけど。そのためにロゴナの国主の合意がいるの」

機械仕掛けさん「そうか、先見師様に会うのか・・・。分かった。ジランドル−TをUに改装してやろう」

 ほどなくしてジランドル−Tは対慣性機関と自由航法システムを装備されジランドル−Uとなった。

アイネス「ありがとう機械仕掛けさん」

機械仕掛けさん「ホントは‘球’を何機か護衛につけてやりたいが、‘球’と‘XLD2’はミウィの‘身体’と‘精神’じゃからの。
          球がミウィから離れて、アイネスの共をするわけにはいかん。十分に気をつけるのだぞ」

アイネス「そんなに心配しないで。ジエアがいてくれるんだから大丈夫よ」

ジエア「ガウッ!」

 そのとおりと言うようにジエアは一声咆えた。

機械仕掛けさん「そうかのぉ・・・」

アイネス「それでは、行ってきます」

機械仕掛けさん「気をつけてな。あまり無茶はするでないぞ」

 こうしてアイネスは‘機械仕掛けさん’の声援を受けながら、ロゴナを目指してジランドル−Uを発進させた。
 

<つづく>





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