ドラゴンアイズ ノベル
 

 第2話 : 永霧の都の先見師
 
 

 ジランドル−Uはミウィの周回軌道を離れ、今はψ太陽系内宇宙空間を航行している。
ψ太陽系は、ψ型太陽、永霧の都、ガールドリア、ムルク、ロゴナ、二連惑星のスタンリィとキルティの1恒星6惑星で構成されている。
アイネスはその中の第4惑星ロゴナに向けて針路をとった。
ロゴナはガールドリアと並んでこのψ型太陽連邦の勢力を二分している大国であるが、実情はロゴナの勢力の方がわずかに優っていた。
そしてロゴナはクリンドの産まれ故郷でもあった。
 
 
 
 

 そしてロゴナに到着したアイネス達はロゴナの王城を訪れた。
王城の門前では女性衛士のメーディ・レギムスが立っている。
ロゴナの国民たちは、大体がガールドリアに対して敵意を抱いているため、メーディのアイネスを見る視線は自然と鋭いものになっていた。

メーディ「アイネス・ヴァレドゥープ様ですね。ガールドリアの国皇ケイゼル・ヴァレドゥープ様より事情は伺っております。
     先ほどから殿下がお待ちになっておいでですので、さっそくご案内いたします」

 それだけ言うとメーディは踵を返して王城へと入っていった。

アイネス「は、はい」

 アイネス達は慌ててメーディの後を追った。
ケイゼルがあらかじめ手をまわしてくれていてくれた様なので、穏便に王城には入れたが歓迎はされていないようだ。
そしてしばらく王城の中を歩き、会見室に案内された。
 
 
 
 

 会見室には王座に座る、ロゴナの王子ドルジオ・ランガァと、その脇に控える摂政のディアブロ・カコースがいた。
ドルジオはロゴナ前国王の弟王の嫡男である。歳はクリンドよりも2歳年下の20歳で、クリンドの従弟だ。
そしてその右手には‘世継ぎの証’であるバロッキーが嵌められている。
ディアブロは目つきの鋭い30代の男性。その過去の一切が謎であり、実は異邦人であるだとか、色々噂の絶えない人物だ。
だがその政治手腕はかなりのもので、国王が不在の現在、彼がロゴナの全権を掌握しているとも言われている。

アイネス「ドルジオ殿下。突然の来訪に対してこの様に会見を開いて頂き、真に恐縮に存じます」

ドルジオ「アイネス様。‘生命ある宝石’がそのような堅苦しい話し方などされなくてもよろしいですよ。もっと楽にしてください」

アイネス「はい。ありがとうございます」

 そう言われてアイネスは少し肩の力を抜いた。

ドルジオ「ところでアイネス様。わたしの従兄殿はお元気ですか?」

 しかしそこへこの質問を浴びせ掛けられた。

アイネス「!」

ドルジオ「聞いていますよ。中央からの帰国途中で消息不明になったとか・・・」

アイネス「は・・・はい」

ドルジオ「実の子供が誕生したからといって、このロゴナから養嗣子に行かれた従兄殿をないがしろにするからこんな事態になるのですよ。
      本来であればロゴナの国辱に価しますよ。
      ・・・そううだよね、ディアブロ」

ディアブロ「はい、殿下。本来であれば国家間の関係に多大な影響を及ぼす事態です」

アイネス「ですから!!今日はそのことでお願いがあって参ったのです」

 アイネスは恥辱を噛み締めながらも、本題を切り出した。

ドルジオ「なんですかな。‘生命ある宝石’様」

アイネス「クリンド義兄様の行方を捜すため、先見師様のお力をお借りしたいのです。
      そのためにどうかロゴナの国主の先見師様覚醒の同意を頂けないでしょうか」

ドルジオ「先見師様ですか・・・。
      ま、いいでしょう。いまは、わたしがロゴナの国主ですからね!
      そんな時代遅れの占いを信じたいのであれば、私がロゴナの国主として先見師様の覚醒に合意して差し上げますよ」

アイネス「・・・本当に?本当に、合意していただけるんですか・・・!?」

 アイネスはこんなに簡単に合意してもらえるとは思っていなかったために聞き返してしまった。

ドルジオ「だって、こちらの権利を放棄するワケではないし、構わないだろディアブロ。
      ガールドリアが持っている自分の権利でとり行なうだけなんだからね」

ディアブロ「御意のままに・・・」

アイネス「あ、ありがとうございます!これで義兄様のお役に立てます!」

ドルジオ「ところでアイネス様。
      たとえ従兄殿になにかあったとしても、わたしと皇女が結ばれれば、もっとより良い国家間の改革が行えるとは思いませんか」

アイネス「はっ?」

 ドルジオの以外な言葉にアイネスの口からは間の抜けた声が漏れた。

ドルジオ「ふふっ。返事は今すぐにとは言いません。ですが考えておいては頂けませんか」

アイネス「・・・はい、分かりました。考えておきます。それでは失礼いたします」

 それだけ言うとアイネスはドルジオ達に背を向けた。

ドルジオ「良い返事を期待していますよ」

 ドルジオの言葉を背に受けながらアイネス達は会見室を後にした。
 
 
 
 

アイネス「ジエア、よく我慢したわね」

 王城から出た後、さっきから低くうなり続けているジエアを撫でてあげた。
ジエアはさっきからドルジオに対して咆えかかりたいのを、じっと我慢していたのだ。

ジエア「ガルル・・・」

アイネス「ふぅ・・・。ともかく先見師様覚醒の同意は得られたわ。
      ガールドリアとロゴナの関係が最悪の事態を迎える前に、なんとしても義兄様を捜さなくては!
      それに、わたしはあの人のお嫁さんになるつもりなんて、これっぽっちも無いもの!」

 そしてアイネスはすぐさまジランドル−Uに乗り、永霧の都を目指した。
 
 
 
 

 アイネス達はψ太陽系第1惑星、永霧の都に到着、降下した。
そしてジランドル−Uを霧海岬に着陸させた。
永霧の都はその名のとおり惑星全土が霧に包まれた惑星である。
この惑星は環境惑星としてガンマ型T−6改造処理を施された副作用のため、霧が晴れることがない。

アイネス「先見師様ってどんな御方かしら。古くから、この太陽系にいらっしゃるんだから・・・。
      きっとたくさんお歳を召されていらっしゃるわよね」

アイネス達はジランドル−Uから降り、さっそく先見の部屋に向かうことにした。
 
 
 
 

 先見の部屋の前ではショートカットの黒髪の女性が立っていた。

アイネス「あの、あなたが先見師様でしょうか?」

イエム「いいえ。あたしは先見師エテルナ様にお仕えしております。侍女イエム・クルビーナと申します」

アイネス(そうよね。こんなにお若い方が先見師様のはずがないわよね)

 イエムはアイネスとそれほど歳が変わらないぐらいに見えた。

アイネス「わたしはガールドリアの皇女、アイネス・ヴァレドゥープです。
      先見師様にお会いしたいのですが、お取次ぎ願えませんでしょうか。
      ガールドリアとロゴナの国主からはすでに先見師様覚醒の同意は得ておりますので」

イエム「分かりました。お取次ぎいたします。
     以前まではガールドリアの国主とロゴナの国主と、あとキルティの国主の合意も必要だったのですよ。
     今ではキルティはあのようになってしまいましたが・・・。
     では、いらしてください。先ほどロゴナから連絡がありましたのでエテルナ様はもうお目覚めになっておられますよ」

アイネス(エテルナ様・・・。どんな御方なのかしら。楽しみだわ)

 アイネス達はイエムに建物の中に案内された。
 
 
 
 

 案内された先見の部屋は和洋折衷とりまぜられた、不思議な感じのする部屋だった。
そして部屋の中央のテーブルに1人の女性が座っていた。
そのテーブルの上には水晶玉と中央に大きな目のようなものが嵌め込まれたヘルメットのようなものが置かれていた。

エテルナ「わたくしが、このψ太陽系の先見師エテルナ・ラグナスです。
      イエムや・・・お客様にお茶を差し上げなさい」

 アイネスはエテルナを見てまずその容姿に驚いた。
エテルナは自分とさほど変わらない歳に見えたからだ。
このψ太陽系連邦の誕生当時から先見師として永霧の都にいるはずなのに、とてもそのような年齢には見えない。
目は碧眼で金髪をショートカットにし、額に青いジュエムをつけている。

イエム「畏まりました。エテルナ様」

 イエムはお茶の用意をしに部屋を出ていった。

アイネス「先見師様・・・!どうぞ、教えて下さいな!!」

 アイネスは待ちきれなくなって口を開いた。

エテルナ「フフ・・・この先見の部屋に着て、先を急ぐこともないでしょう?
      イエムに入れてもらっているハーブティーは少し時間がかかりますしね。
      それに、まずはお嬢さんの素性から聞かせてくださいな。
      ここは本来、国主以外は入れぬ場所なのですからね」

アイネス「は、はい」

 アイネスはまだ自己紹介もしていなかった自分に恥じた。

アイネス「私の名前はアイネス・ヴァレドゥープ。17歳です」

エテルナ(ヴァレドゥープ・・・長い物忌みで記憶が蘇らないけれど、何かと関係があった名前ではなかったかしら?)

アイネス「このψ太陽系第二惑星ガールドリアの第一皇女として誕生しました。
      今は環境衛星ミウィに住んでいます。
      わたしは・・・わたしは、ここを訪れるための、ガールドリアとロゴナの国主の合意はいただいております!」

 初めは落ち着いていたアイネスの声がだんだん興奮のためか大きくなってきた。

エテルナ「そうまでして、わたくしを覚醒させ・・・相談したいこととは?」

 アイネスは今までの事のあらましを説明した。

エテルナ「・・・あなたの義兄様が消息不明に?それで、この先見の部屋に・・・?
      フフフ・・・あっ、ごめんなさいね、笑ったりして。わたくしは嬉しいのですよ。
      国家の存続のためとか、政治不安の回避とか・・・今までそんな事ばかり尋ねられました。
      それらは本当にわたくしが必要だったのか疑問に思うものばかりだったんです。
      ですが、あなたには必要だし、わたくしはお役に立てると思いますよ」

アイネス「それでは・・・」

エテルナ「はい、見てさしあげますよ。ただ、わたくしが知ることが出来るのは、‘運命の分岐点’です。
      ・・・その進路を選択するのは、それを聞いた者たち自身なのです。
      そのことを忘れないでいてください」

アイネス(そこまでに至る方法は教えてくれても、そこで何をすればいいのかは自分で決めなくちゃいけないってことかしら・・・)

エテルナ「それでは、しばらくお待ちなさい・・・」

 エテルナはテーブルに置いてあった大きな目の嵌めこまれたヘルメットを被った。
そして手に水晶の球を持って目を閉じた。
どうやら精神統一に入ったようだった。
アイネスやジエアにも部屋に緊張感が高まっていくのが分かる。

エテルナ「Μαλησπερα.
      Μπορω να κανω μια ερωτιση;
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・
      Ευχαριστω παρα πολυ.」

 そしてエテルナの口から呪文のようなものがつむがれた。

エテルナ「・・・‘渡り星’と出会えば、あなたの友は殻を捨て去り、あなたの望みをかなえる手助けとなってくれるはずです」

 そして先見が終わり、エテルナはそう告げてくれた。

アイネス「・・・‘渡り星’・・・?友って・・・友達は、わたしにはジエアしか・・・ジエア?ジエアのことなのですか・・・!?」

エテルナ「わたくしには、誰のことなのかは分かりません。この一角狼のことなのか、これから出会う人物のことなのか・・・。
      ‘渡り星’というのは、言葉のとおり宇宙を渡って行く星のことです。・・・流星や彗星とは違いますけどね。
      約二世紀あまりの周期で、ψ太陽系を通過する星のことなのです」

アイネス「いつ・・・それは、いつのことですか?」

エテルナ「わたくしにも分かりません。たぶん・・・時期が来た時。あなたが望み、望まれたのが‘渡り星’なのですから・・・」

アイネス「・・・」

イエム「エテルナ様・・・お茶の支度が整いました」

 そこへ話が終わったのを見計らったようにイエムがお茶を持って戻って来た。

アイネス「ありがとうございました、先見師様・・・!」

エテルナ「フフ・・・どういたしまして」

イエム「見ていただけたのですね。・・・よかったですね、皇女様」

アイネス「はい」

エテルナ「ではお茶にしましょうか」

 テーブルの上でイエムが手早くお茶の用意を整えてゆく。

イエム「どうぞ」

 アイネスの前に出されたカップの中には美しい真紅色のお茶が入っていた。
アイネスはそれを一口飲んでみた。

アイネス「す、すっぱい!」

 口の中に広がる酸味にアイネスは思わず言ってしまった。

エテルナ「フフフ・・・・慣れればこの味も甘く感じますよ。でも慣れないうちは砂糖を入れたほうがいいかもしれませんね」

 エテルナは砂糖を入れずに平然とお茶を飲んでいる。
アイネスは砂糖を3杯入れてようやく飲める味になったというのに。
その隣ではジエアがお菓子のラズベリーもどきのパイを食べている。

イエム「皇女様もお菓子を召し上がってくださいね。
     余ってしまったら、今日から三日三晩このパイを食べなくてはならなくなってしまいますから」

 イエムがアイネスにもジエアと同じパイを勧めてきた。

アイネス「はい、いただきます」

 アイネスもパイを食べてみるとすごくおいしかったが、三日三晩食べるのは辛いだろうなと思った。

エテルナ「そう言えば、あなたのヴァレドープと言う名前が気になっていたのですが、今思い出しましたよ。
      エヌベルユの巫女様の名前のセカンド・ネームが、あなたのと似ているのですよ」

アイネス「えっ!そうなのですか」

エテルナ「フフ・・・、あなたの祖先とエヌベルユの巫女様はなにか関わりがあったのかも知れませんね」

アイネス「ところで先見師様、お聞きしたい事があるのですけどお尋ねにしてもよろしいでしょうか?」

 部屋の雰囲気が和んできたのでアイネスは気になっていたことを聞いてみることにした。

エテルナ「なんでしょうか。わたくしに答えられる範囲のことでよければお答え出来ますけど」

アイネス「先見師様ってどうして先のことが分かるのですか?Psi能力のプレコグニションみたいなモノでしょうか・・・?」

エテルナ「違いますよ。実際にはわたくし自身が先見をしているのではないのです。
      先見自体をしているのはエヌベルユの巫女様なんです。
      わたくしはエヌベルユの巫女様に伺って、それを伝えているにすぎないのですよ」

アイネス「では先見師様はなぜずっとお若いままなのですか。それもエヌベルユの巫女様のお力ですか?」

 アイネスが次に気になっていたことを聞くとエテルナは少し悲しそうな表情をした。

エテルナ「いいえ、それも違います。わたくしが歳を取っていない様に見えるのは物忌みを行っているせいですよ」

アイネス「物忌みってどんなことをするのですか?」

エテルナ「物忌みとは擬似ウラシマ効果を生み出す寝台で眠りにつくことですよ。
      わたくしが若く見えるのは実際に起きて活動をしていた時間がほとんどないからなのですよ。
      先見師はエヌベルユの巫女様とは違って何もせずに今まで生きられるわけではありませんからね」

アイネス「なぜ・・・そうまでして、なぜこのψ太陽系に尽くしてくださるんですか?」     

エテルナ「それがわたくしのすべきことだからですよ」

アイネス「そんな・・・」

エテルナ「人はそれぞれ産まれながらに、なにかしらのお役目を背負っているものなんですよ。
      わたくしのお役目が先見師になることだった・・・ただそれだけのことなのです。
      さしあたって今あなたがすべきことは‘渡り星’を見つけることですけど・・・。
      問題は、出会う方法ですね。
      ‘渡り星’は未だに実害もなく光速に近い速度で移動しているので、感心がないのか、調査できないのか・・・。
      ともかく詳しいことは何も分かっていないのです」

アイネス(‘渡り星’の移動速度が光速に近いのであればジランドルーのレーダーが捕捉したとしても、約2秒後には通過して行ってしまうわ。
      どうしたら、‘渡り星’とランデブーできるのかしら・・・?)

エテルナ「困っているようですね。では、わたくしがもう1つだけ力をお貸ししましょう」

アイネス「えっ!」

エテルナ「Επιβραδυνω.この呪文を授けましょう。
      この呪文は、制動の呪文・・・この呪文があれば、光速に近い速度で移動している‘渡り星’と出会う時に役に立つでしょう」

アイネス「あ、ありがとうございます先見師様!」

エテルナ「それと、この呪文は言葉自身に‘力’があるわけではなく、
      この呪文が遥かかなたの聖地エヌベルユにまで届き、
      唱えた者のために巫女様が‘力’を貸してくださるものですからね」

アイネス「はい」

エテルナ「それではそろそろお行きなさい。わたくしはもうすぐ物忌みに入らなくてはなりませんから」

アイネス「・・・はい。色々とありがとうございました、先見師様」

エテルナ「きっとあなたの望みは叶いますよ。義兄様を見つける事が、あなたの幸せにつながるのですからね」

アイネス「はい」

 この時アイネスはもう涙目になっていた。

エテルナ「イエム。外までお送りしてあげて」

イエム「はい。ではアイネス様こちらへ」

アイネス「さようなら、先見師様」

エテルナ「またお会い出来るといいですね・・・。わたくしはあなたが気にいりましたよ」

 アイネス達はイエムに連れられて先見の部屋を後にした。
 
 
 
 

 外に出るとイエムがアイネスに話しかけてきた。

イエム「あたし、エテルナ様とお話したのは今回が初めてなんです」

アイネス「えっ、だって先見師様の侍女なんでしょ?」

イエム「先見師様の侍女のお役目は先見が必要な方がお来しになった時にだけ先見師様をお起こしてお世話することです。
     ですから、その時以外はずっと待っているだけなんです。
     あたし、エテルナ様の侍女になる前は、ムルクにも行ったことがあるんですよ。
     あそこから眺める星空は、本当にステキで・・・。
     どうして、同じψ太陽系なのに、ムルクから眺める星空は格別なのでしょうね?
     ここの空は霧ばかりで・・・」

 そう言うとイエムは空を仰いだ。

アイネス「・・・」

 アイネスはそんなイエムに何も言ってあげられなかった。
だから一緒に空を仰いだ。
目に映るものはやはり霧だけだったけれど。

イエム「でも今日初めてエテルナ様とお話が出来て・・・。とってもステキな方で・・・。
    あたしが生きている間に、もう一度覚醒されることがあれば嬉しいと思いますけど・・・。
    それは、あまり良くないことなのですものね。
    ですが、もし皇女様が国主になられたその時は・・・もう一度ここを訪れてくださいね。
    先見師様共々お待ちしておりますから」

アイネス「はい、お約束します。その時はまたお願いしますね」
 
 

 こうしてアイネスは永霧の都を後にした。
‘渡り星’を見つけるという、もう一つの手掛りを携えて。
 

<つづく>





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