第7話 : 中央管理局の局長
フリッカ「アイネス様、これからの事でアタシから1つ提案があるのですが」
一行がソルダートの宮殿を離れてジランドル−Vに戻ってくるとフリッカがそう言い出した。
アイネス「なぁに?フリッカ」
フリッカ「クリンド様の失踪にジェリスが関わっている可能性は濃厚なのですから、
このことを中央管理局の局長に報告すれば中央管理局の協力が得られるかもしれません。
ここからなら中央も近いですし、行ってみるのはどうでしょうか?」
ジエア『へぇ、それって良い考えじゃない。行こうよアイネス』
アイネス「そうね・・・。たしかに今回のことは中央にも報告しておいたほうがいいかも知れないし・・・。
分かったわ、中央管理局に向かいましょう」
こうして一行は一路、中央管理局を目指すことになった。
そして中央の総本山、ユアラナス本星に到着した一行はすぐに国家元首官邸を目指した。
中央というのは、銀河系連邦を統括している‘中央管理局’のことである。
赤道半径1180kmの前衛惑星と赤道半径24300kmの後衛惑星という2つの防衛惑星があり、
本星の赤道半径は25400km,その衛星軌道上には環境改造衛星15個、人工環境衛星48個あって、
それらを総称して、中央と呼ばれていた。
中央は植民惑星が太陽系国家になるまでの全過程のサポートもしており、ψ太陽系を発見して、惑星改造を行ったのも中央だった。
フリッカ「銀河系連邦の国家元首は、‘地球’生まれだというウワサですけど・・・信じられます?
‘地球’が‘火星’との戦争で崩壊したのは、もう何十世紀も前のことなんですよ!
もし本当だとしたら、きっとよぼよぼのお爺さんですよね」
フリッカは官邸への道すがら、元首のウワサ話をアイネスに語った。
そして一行が銀河系連邦の国家元首官邸を訪れると、官邸の前では衛士レリア・ルンが警備にあたっていた。
レリアはエメラルドグリーンの長髪に、綺麗な顔立ちをした20代くらいの美人だった。
身体には細工の鮮やかなボディアーマーを着用している。
レリアを初め、銀河連邦の衛士たちは、一見きゃしゃで優雅そうに見えるのだが、銀河系内では精鋭の衛士たちなのである。
レリア「初めまして、私は衛師々長のレリア・ルンです」
官邸の前まで行くと、レリアが挨拶をしてきた。
アイネス「初めまして、アイネス・ヴァレドゥープです。
この度は私の義兄、クリンド・ヴァレドゥープの失踪に関わることで、
中央管理局の局長にご報告していことがありまして参りました」
アイネスが挨拶を返し用件を伝えると、レリアは少し思案した後話し出した。
レリア「あぁ・・・クリンド君。この中央の学校区になっている自然改造衛星コーデリアで留学している子ね。
彼はメタ・チルテニウムを開発したことで有名だから、良く知っているわ。
でもはっきり言わせてもらうのならば・・・厄介なものを開発してくれたわ。この銀河系連邦の脅威となりかねないモノだもの。
にも関わらず資料もパテントもクリンド君が所有して帰郷すると言うので、あたしたちは僅かながら不安を抱いていたわ。
それなのに不安は的中し、消息不明になってしまって・・・。
もしメタ・チルテニウムの機密が悪用されるようならば、クリンド君の処分も考えなくてはならないわ」
アイネス「えっ・・・・・・」
レリアの物言いはアイネスにとっては衝撃だった。
アイネスはクリンドは中央でもみんなからは良く思われているとずっと思っていたからだ。
フリッカ「それよりも局長には取り次いでは頂けないのでしょうか?」
衝撃から立ち直っていないアイネスに代わってフリッカがレリアに尋ねた。
レリア「局長はお忙しい方だから、お会いしてくださるかどうか分からないのだけど、取り次いでみるわね」
レリアは近くにあった端末を操作し、しばらく問答をした後こちらに向き直った。
レリア「局長がお会いになるそうですので、ついていらして下さい」
一行はレリアの案内の下、謁見室まで案内された。
そして部屋に入ると、そこには1人の男性が立っていた。
ネオミック「初めまして、わたしがこの中央管理局々長であり、銀河系連邦の国家元首を兼任しているネオミック・クレアドールです」
一同はまずネオミックの容姿の若さに驚かされた。
ネオミックは短めな青い髪に青い目ををした整った凛々しい顔の、どう見ても27歳前後ぐらいの男性で、
とても地球生まれの何百歳の老人には見えなかった。
アイネス(こんなにお若いのに、‘地球’生まれだなんて‥‥ウワサなんて、きっとでまかせだわ)
アイネスはすぐにウワサのことなど否定し、忘れてしまった。
ネオミック「どうぞ、お掛けになってください」
ネオミックに席を勧められ、一同が席につく。
秘書「失礼します」
そして隣室から秘書が手にコーヒーの乗ったトレイを持って現れ、皆に配っていった。
そしてまた隣室へと戻って行く。
ネオミック「お口に合えばよろしいのですが。どうぞ」
アイネスは勧められるまま一口飲んでみた。
アイネス(美味しい、美味しい・・・!ムルク産のどんなA級豆よりも美味しいコーヒーだわ!)
そしてあまりの美味しさに驚いた。
一方、アイネスの隣にいたフリッカはコーヒーには手をつけず、目を輝かせながら、じっとネオミックを見ていた。
フリッカ「閣下は・・・アタシの好みかもしれません・・・」
そして小さく呟いた。
ジエア『アイネス・・・ボク、この元首は苦手だよ。だって、どんな‘存在’なんだかわからないんだもん!
前意識もわからないっていうのは、この元首ぐらいだよ。他の人ならば、ボクは無意識のことだって分かるのに・・・』
ジエアはネオミックを‘見る’とアイネスにこっそり話しかけた。
そんなジエアを見てネオミックは驚いた顔をする。
ネオミック「これは珍しい。一角狼、それも成人している一角狼に会ったのはずいぶん久しぶりですよ」
アイネス「閣下は一角狼のことをご存知なのですか?」
ネオミックの物言いが具体的であったため、アイネスは気になり尋ねてみた。
ネオミック「よく知っていますよ。彼らが真異星人だってこともね」
アイネス「えっ!」
ネオミックの一言に皆一様に驚いた。
ジエア『だったら何でみんなにそう公表しないのさ?』
ジエアは不満顔でネオミックに問いただした。
ネオミック「それは無用の混乱を避けるためです。
いまはまだ人々に、自分たちの分身のような姿ではない異形の異星人を‘人類’と認める余裕がありませんからね。
わたしは、いつの頃からか、この銀河系に訪れるようになった彼らのことを、故意に公にはしなかったのです。
そのためいままでは、私が故意に伏せていましたけれど。
いつの日か、一角狼が真異星人であることを公にするつもりですよ。
それまで、キミが生き残っていてくれるか、新たに訪れてくれたらの話ですけどね。
数年前に、δ−デルタ−太陽系の豪族の屋敷で最後の1人が死亡して以来、姫様たちがここに訪れてくれるまで、
この銀河系内では一角狼の存在は確認できなかったのですから。
彼らを守護獣だとした、わたしのアイデアは良かったと思うのですけれどね。
‥‥キミにも、テレパシィがあるのでしょう?
彼らは出会ったパートナー、つまり人類たちの思考が理解出来ずに、
フラストレーションの蓄積による衰弱で、死に絶えてしまったのです。
人類は、平気ですけれどね‥‥思っていることと、話していことが違っていていようとも。
‥‥たぶん、この銀河系に生存している一角狼は、カレが最後でしょうね」
アイネス(一角狼が、もうこの銀河系にはいないなんて・・・。
この銀河系にはまだ仲間がいるかも知れないとユオンに聞いて、どこかで会えるかも知れないと楽しみにしていたのに・・・
可哀想なジエア)
アイネスはネオミックの話に聞きながらジエアを眺めた。
ネオミック「ですから・・・どうか、その友だちを大切にしてあげて下さい」
アイネス「はい」
アイネスはジエアと友だちでいられることを今更ながらにうれしく思った。
ネオミック「ところでカレの名前は?」
ジエア『ジエアだよ』
ネオミック「ジエア?」
ネオミックはジエアの名を聞くと、急に懐かしそうな、そしておかしそうな顔になった。
ネオミック「そうか、ジエアというのか。ははは・・・今日はホントに懐かしいモノたちに出会う日だな」
そして楽しそうに笑った。
アイネス「どういうことですか?ジエアの名前に何か変なところでもあるのですか?」
そんなネオミックの態度を不思議に思ったアイネスが尋ねてみた。
ネオミック「いや、失敬。見苦しいところを見せてしまいましたね。
カレの‘ジエア’という名は、‘地球’の英雄の名からとったのですか?」
そして気を落ち着かせてからネオミックは尋ねてきた。
アイネス「はい、そうですけど・・・」
ネオミック「やはりそうですか・・・。彼は、わたしの親友の妻の双子の妹さんの息子でね。
本当の息子ではなかったのだけれど、その妹さんは溺愛していて・・・結局は、わたしはその子に負けて結婚出来なかった。
だから・・・わたしは独り身なのですよ」
そう言ってネオミックは寂しそうに小さく笑った。
フリッカ「あの・・・そのお話はいったい何時のお話なのですか?」
フリッカは不可解そうな顔で問い掛けた。
ネオミック「フフフ・・・。そんなことより、どういった用件でここに来られたのですか?
まさか、わたしの昔話を聞きに来たわけではないでしょう」
しかしネオミックはそれには答えず、逆に問い掛けてきた。
そう言われてアイネスはここに来た理由を話し出した。
アイネス「はい・・・。実は閣下、義兄様を誘拐した犯人を、私・・・思い当たったのです。
義兄様の航宙船の消失の時に、レーダーが捕捉していた快速艇の搭乗者。
その航宙船を、何の前兆も無く消失できるPsi能力者。
ジェリス・セフィードが犯人であると思われます。
ジェリスは・・・ジェリスは、ψ太陽系の惑星キルティの第2王女です。
ジェリスは、そのキルティを資源星として凍結されたことがきっかけとなり、いまではψ太陽系そのものを恨んでいるのです。
その事を閣下のお耳に入れておきたく思い、こうして参らせていただきました」
アイネスの報告を聞いたネオミックは机に肘を立て手を組んだ。
ネオミック「・・・ジェリス・セフィード?姫様が、彼女をご存じとは・・・。.
彼女は、スヴェティから推薦されてここへ来たので、一時期は‘フリーランサ’としての訓練を受けていたのですが、
‘制御者’をつける前に逃亡してしまったのです。
彼女はこの銀河系連邦ではグレイスティングという遠距離快速艇を駆る女海賊として、F級手配がされているはずです」
F級手配とは、発見しだい遺伝子レベルに分解せよ、という最高指令のことである。
フリッカ「ええっ!あの女、昔はここにいたんですか?」
アイネス「F級手配・・・」
フリッカはジェリスの過去に驚き、アイネスはその罪の重さに驚いていた。
ネオミック「姫様はジェリスとは、どこでお会いになられました?」
アイネス「最初はムルクでした。次はロゴナの王子との会見中に、そして最後はソルダートの帝王との謁見中です」
ネオミックはアイネスの話を聞くと、少し難しそうな顔をした。
ネオミック「ψ太陽のロゴナだけではなく、ソルダートでもジェリスと出会ったのですか?
ロゴナの摂政は、ソルダート出身者か・・・
クリンド君の誘拐には、ジェリス以外にソルダートまでも関わっているかも知れませんね」
アイネス「閣下・・・だとしたら、ψ太陽系だけでは対処できません!ぜひともお力をお貸し願えませんでしょうか」
ソルダートのような大国相手に辺境であるψ太陽系がかなう訳も無く、アイネスはネオミックに助力を願った。
ネオミック「わたしもクリンド君の失踪の重要性は十分に認識しています。
メタ・チルテニウムを悪用されたら、この銀河系・・・いや、この宇宙の脅威となってしまうものですから。
それだというのに・・・すまない・・・いまのわたしには、何の手出しも出来無いのだ・・・」
アイネス「え・・・」
その返事を聞いたアイネスは言葉を失ってしまった。
ジエア『なんでだよ!メタ・チルテニウムが悪用されたら大変だって分かってるんでしょ!?』
そんなアイネスに代わってジエアが不躾な抗議をした。
ネオミック「中央管理局はこの銀河系連邦に加盟していない国家の事変には、いっさい干渉することは出来ないのです。
‘フリーランサ’が実用化していれば、独立国に紛れ込んでいようとも、ジェリスを捜索することが出来るのですが・・・」
ネオミックは苦々しそうに答えた。
フリッカ「閣下、先ほどから話に出てくる‘フリーランサ’とはどのようなものなのでしょうか?」
今度はフリッカが自らの疑問を口にした。
ネオミック「‘フリーランサ’というのは、Psi能力者で構成されている、わたしの直属の者たちのことです。
彼らなら、 たとえ独立国家内に逃げ込んだ指名手配の犯人の捜索であろうと制限されずに行えるのです。
しかしまだ実験的なもので、正式にはまだ実用化されていません。
こんどの連邦国家の巡察で、各国での権限を確立してから、実務につけるつもりですがね。
ですが、いまのわたしが、直接動くわけにはいかない。
お願いします、姫様・・・クリンド君の捜索に必要なことであれば、わたしは可能な限り望みを叶えます。
ぜひ、クリンド君の安否を確認して下さい」
そう言ってネオミックはアイネスに頭を下げた。
アイネス「分かりました。かならず私が義兄様を見つけ出してみせます」
そんなネオミックにアイネスは自らの誓いを語ってみせた。
そしてさっそく以前から気になっていたことを聞いてみることにした。
アイネス「それでは、さっそくお聞きしたい事があるのですがよろしいですか?」
ネオミック「なんなりと」
アイネス「では、閣下はジェリスがどのようにしてPsi能力を手に入れたのかはご存知ないでしょうか?」
その問いに対して、ネオミックは少し考えた後に答えた。
ネオミック「・・・聖地エヌベルユ。そこがジェリスがPsi能力を手にしたところです」
そしてネオミックの口からは意外が事実が飛び出してきた。
アイネス「ええっ!!」
そのことに驚きの声を上げるアイネス。
ネオミック「スヴェティが漂流中の彼女を保護した後にPsi能力を身につけたと聞いています」
そしてジェリスの秘密の1つを知る事となった。
アイネス(ジェリスのPsi能力は・・・巫女様から授かったモノなの!?
あぁ・・・だったらエヌベルユの巫女様にお会いしたい!
お会いすることが出来れば、義兄様の捜索にお力を貸していただけるかも知れないし)
アイネスの胸の中に希望の光が灯り、それを押さえきることが出来なかった。
そのためアイネスは勢い込んでネオミックに尋ねた。
アイネス「では、閣下は聖地エヌベルユがどこにあるのかご存知ですか!?」
ネオミック「はい。聖地エヌベルユ・・・それは、このユアラナス本星よりも、さらに内周の星域・・・。
それは・・・人類発祥の地に、最も近いところ・・・そこに聖地エヌベルユがあります。
聖地エヌベルユは、この中央で‘封印’しているのです」
アイネス「閣下・・・どうか、お願いします!聖地エヌベルユを‘開封’してくださいな!
私、エヌベルユの巫女様に、お会いしたい・・・お会いしなければなりません!!」
それを聞くとアイネスはすぐさま必死にネオミックに向かって自分の願いを語った。
ネオミック「・・・なぜですか?」
するとネオミックの顔が少し険しくなった。
アイネス「私とジェリスとでは、違いすぎますもの。いまのままでは、私にジェリスがしようとしていることを止められません。
私・・・ジェリスのように巫女様から‘力’を授かりたいのです!」
アイネスはネオミックの目を真っ直ぐ見ながら、自分の気持ちを正直に話した。
ネオミック「スヴェティのしていることは、Psi能力を授けているのではありません・・・引き出しているのです。
もともとの資質を現状よりも活性化させているだけなのです。
姫様がエヌベルユへ行っても、ジェリスのようになれるとは限りませんよ。
それでもよいのならば・・・‘開封’しましょう」
アイネス「それでは、聖地エヌベルユを訪れてもいいのですね?」
アイネスは期待で笑みを浮かべながら問い返した。
ネオミック「はい。星域を‘開封’するように、ジュピターに手配しておきます。
聖地エヌベルユは、この太陽系の第4・・・いや、いまでは第3の惑星です。
姫様たちを行かせるのも、きっとこれが最後になるでしょうからよく見ておくのですよ。
エヌベルユは・・・我々人類の‘枷’なのですから」
アイネス(‘枷’?)
アイネスはその言葉が少し引っかかったが聞き返しはしなかった。
それはその言葉を言った時のネオミックの表情を思い返すと、何故だか問い返しても答えてはくれないような気がしたからだった。
アイネス「それにしても、なぜ、ソルダートはジェリスに肩入れして、辺境のψ太陽系などに関わりを持つのでしょうか?
確かに、ジェリスのPsi能力での攻撃は恐怖でしょうけれど・・・それだけではない気がするのです。
目的は・・・やはり、チルテニウム鉱石なのでしょうか?」
それよりもアイネスは話の中で浮かんだ疑問をネオミックに投げかけた。
アイネス(だとすれば、メタ・チルテニウムさえなければ・・・こんなことには、ならなかったかも知れないわ)
しかし返ってきた答えは意外なものだった。
ネオミック「姫様は、ご存知ないのですか・・・ヴァレドゥープという名の由来を?
では、聖地エヌベルユへ行った時に、巫女スヴェティ・ドゥープに伺ってごらんなさい、きっと分かりますよ」
アイネス「・・・はい、分かりました。そうしてみます」
アイネスはいよいよ自分の名の秘密が知れることに少しわくわくしてきていた。
フリッカ「アイネス様・・・。本当に聖地まで行かれるおつもりなのですか?」
フリッカは2人の会話の頃合を見計らってから、心配そうにアイネスに問いかけた。
アイネス「そのつもりだけれど・・・」
アイネスはフリッカの問いの意図が分からず、不思議そうに答えた。
フリッカ「あたしは・・・あたしは、本当は反対です。
Psi能力を身につけるために、どんなことをしなければならないのか、分かってないのですよ!」
フリッカは少し興奮気味にアイネスに問いただした。
アイネス「ありがとう、フリッカ・・・。でも心配しないで、私なら大丈夫だから」
アイネスはフリッカの気遣いをありがたく思ったが、決意は変らなかった。
フリッカ「・・・」
そのためか、フリッカは不満顔なままだった。
ジエア『そうだよ。それに、どこへ行こうと、どんなことをしようと・・・ボクが守ってあげる!』
一方ジエアの方は、すっかりアイネスのナイトきどりで行く気は満々だ。
ネオミック「それでは、わたしからの伝言をスヴェティに伝えてください。「どうか・・・わたしをはやく逝かせて欲しい」とね」
最後にネオミックはそう言うと少し寂しそうな、悲しそうな、複雑な表情をした。
そんな顔を見たアイネスたちは「はい」としか答えられず、そのまま謁見室を後にすることとなった。
<つづく>