ドラゴンアイズ ノベル
 

 エピローグ


 ・・・衛星バーザ崩壊以来、君主を失った惑星国家ロゴナは、事実上惑星国家ガールドリアに併合され、ψ太陽系連邦は、主星ガールドリアが唯一の独立惑星国家となったために、結果的には、太陽系連邦から太陽系国家への改革を促進することになった。
 それは人々に望まれていた結果ではあったが、しかし真の国家統合とは言いがたく、侵略による武力併合と何ら大差のない結果との判定を下した中央−銀河系連邦は、この太陽系国家の加盟を一時見送り、その国家運営の様子を幾世紀か見守った後に、銀河系連邦への加盟の是非を決定することにした。

 いっぽうアイネスは、無事に国皇ケイゼルや皇后ガールドリアとの再開を果たしたが、クリンドとフリッカの生存の可能性を捨てきれずに、ジエアと共にバーザ崩壊星域一帯の捜索を行っていた。
 しかし、何ひとつその手がかりを得られないままに、日々を重ねていた・・・。



 そして、アイネスが改革の宣言を行う日がついに訪れる。

 改革宣言が行われる皇城のバルコニー前は見渡すかぎりの人で埋め尽くされている。
 皆、アイネスの姿が現れるのを今か今かと心待ちにしていた。
 
 バルコニーの奥では、この日のために特注したガールドリアの正装を着たアイネスが出番を待っていた。
 しかし、その表情はこの場の雰囲気には似つかわしくない、暗く沈んだものだった。

アイネス(この太陽系国家への改革を・・・私は、心から祝福する事ができないわ。
      本来ならば、太陽系国家への改革は従星からの提唱を、主星が受諾して行われる。
      この太陽系国家は・・・銀河系へ加盟も出来ずに、国家改革をしたとしても著しい発展を望めないのだもの
      ・・・義兄様が、いらっしゃれば・・・・・・)

?「・・・・・・アイネス!」

 突然呼ばれたその声にアイネスが振り返ると、

アイネス「・・・・・・に・・・い様? 義兄様っ・・・!!」

 そこにはロゴナの正装を着たクリンドと、ガールドリアの礼服を着たフリッカの姿があった。
 アイネスは一目散にクリンドの胸に飛び込む。

アイネス「・・・義兄様! よくご無事で・・・!!」

 そして、しっかりとクリンドに抱きついた。

クリンド「ごめんよ・・・アイネス。僕もフリッカも、バーザから逃げ出すときに負傷してしまって、身動きがとれなかったんだ」

アイネス「フリッカも・・・本当に、よく無事に戻ってくれました!」

フリッカ「ご心配をかけました、アイネス様!」

ジエア『でも、よく・・・無事だったね!?』

フリッカ「あれからあたしたち、あの兵士たちの襲撃を受けたのだけれど、
     アイネス様のジランドル-Tを分離することが出来たので、
     ぎりぎりでミウィからのドラゴンアイの砲撃前に、バーザから脱出できたのです。
     ・・・けれど、兵士たちの襲撃で損傷していたジランドルは、制御も通信も不能だったので、
     ムルクの未開拓地に漂着するのが、やっとだったのです」

アイネス「あぁ、感謝いたします・・・エヌベルユの巫女様!」


 ジエアはアイネスたちに気をきかせてバルコニーの奥へ離れると、

ヴン

 目の前にユオンがレヴィテイションして現れた。

ジエア『ユオン・・・!?』

ユオン『・・・迎えに来ましたよ、ジエア!』

ジエア『待って・・・少しだけ。お別れもしていないし、まだアイネスの本当の望みが叶うかどうか分かっていないもの』

ユオン『いいわよ・・・お友だちだものね』

 ユオンはジエアから視線を外すと、バルコニーに目を向けた。



 クリンドはアイネスを抱き止める力を少し緩めると顔を上げさせ、アイネスの瞳を真っ直ぐに見つめた。

クリンド「アイネス・・・僕たちが、義理の兄妹でなくなったとしても。僕を慕ってくれるかい?」

アイネス「もちろんです・・・!」

クリンド「フフ・・・それを聞いて、僕は安心したよ」

アイネス「・・・?」

クリンド「では・・・始めるよ。いいね、アイネス・・・?」

 クリンドはアイネスの手を取ると、バルコニーの外を向く。

アイネス「・・・はい!」

 アイネスもしっかりと手を握り返すとクリンドの隣に並んで歩き出した。



 最初に2人がバルコニーに現れると、人々はクリンドの姿があることに驚き、一時会場は騒然となった。
 しかしクリンドが口を開いて話し出すと、すぐにざわめきはおさまってゆく。

クリンド「この惑星国家ガールドリアの国皇、ケイゼル・ヴァレドゥープの養嗣子であった私は、
      先ほど国皇にヴァレドゥープの名前を返上しました。
      そして、惑星国家ロゴナの正統な王位継承者、第一王子クリンド・ランガァとして、ケイゼル国皇の承認をいただき、
      ロゴナの王位を継承いたしました。
      ・・・ここに、さらなるψ太陽系連邦の発展と、結合する惑星国家の栄耀栄華を実現するために提唱いたします。
      このψ太陽系連邦を、新太陽系国家ガールドリアとして改革することを!」

アイネス「惑星国家ガールドリアの第一皇女、アイネス・ヴァレドゥープは、ロゴナの若き国王、クリンド・ランガァの提唱を
      ・・・・・・歓迎いたします!」

クリンド&アイネス「「ここに、太陽系国家ガールドリアの誕生を宣言します!!」」

 2人の宣言が終わると、会場には大歓声と拍手が沸き起こり、それはいつまでもいつまでも途絶える事がなかった。




 アイネスたちが宣言をしたのと、ほぼ同じ頃
 三眼猫を連れた黒髪の女が黒い快速艇でψ太陽系の片隅を渡っていた事は
 今はまだ誰にも知られてはいない。

= To be continued!? =








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