その後の秘天使たち
身動き一つできない貴也。
フォル、リアの方を向く。
フォル「素因が見つかったのですねマリアローダ」
リア「アネキ、何・・・言ってんだい」
貴也「フォル!本当に僕のことが解らないのかい」
フォルの肩をつかもうとする貴也。
フォル、それを片手でいなし、ベルのほうを向く。
フォル「エインデベル。鐘は一つも鳴ってはいませんが人類はベスティアではなかったのですか?」
ベル「フォル姉様・・・何を言っているの・・・まさか失敗したんじゃ」
顔面蒼白で震えるベル。
SE:どさっ
地面にひざを着く貴也
クレア「違うわベル。あれはサダルメルクよ。そうでしょ!フォルシーニア・サダルメルク・ルクバァ」
サダルメルク「そうですよクレアリデル。ひさしぶりですね」
クレアを見る貴也
貴也「どういうことなんですか?クレアさん」
クレア「あれはフォルであってフォルでないの。昔フォルが自分のお役目の重さに耐え切れずに作り出したフォルのもう一つの人格なのよ」
ミリ、フォルの身体にしがみつく。
ミリ「あんたフォル姉ちゃんに何したのよ。フォル姉ちゃんを元に戻しなさい!」
サダルメルク「それは無理ですミリネール、サダルスードは今までの記憶を無くし眠りについています」
ミリ「そんな・・・」
呆然とするミリ
サダルメルク「そんなことよりクレアリデル。この地はハルマゲドンですね。人類はべスティアではなかったのですか?」
クレア「サダルメルク、今はまだ’その時’ではないの、だからもう少しだけ眠っていなさい。それとサダクビアあなたもいるんでしょう。出てきなさい!」
フォルの瞳が紅から緑へと変わる。
サダクビア「なんですか?クレアさん」
クレア「これはどういうことなのか説明してちょうだい。あなたになら解るはずよね。サダルスードはどうなったの」
またクレアの顔を見る貴也。
貴也「サダクビアって誰ですか?」
クレア「彼女はフォルシーニア・サダクビア・ルクバァ。フォルの全てを知る者、トレーサーよ」
サダクビア「プラチナディスクに残っていてフォルが取り戻した部分というのは第3天使の能力と記憶の一部、私とサダルメルクの人格のほぼ全てだったのですよ。それが今までのサダルスードの記憶と入れ替わったため、サダルスードは自己を保てなくなり眠りにつき、そしてサダルメルクの人格が表に現れたのです」
ベル「それじゃあやっぱりフォル姉様は記憶を失ってしまったの」
サダクビア「そうです。今サダルスードの記憶はプラチナディスクの中に’記録’として残っています」
ミリ「じゃあもう一度プラチナディスクを使えば元に戻るんじゃ」
サダクビア「それは無理です。この体の人格形成部にはもう空き容量がありませんから不可能です」
貴也「そんな・・・それじゃあもうフォルに記憶を取り戻させる方法は無いって言うんですか・・・」
うなだれる貴也。
サダクビア「ありますよ」
一同「「えっ!!」」
一斉にサダクビアを見る一同。
ミリ「あるんならもったいづけずにさっさと教えなさいよ!あせっちゃったじゃない」
サダクビア「その方法とは私とサダルメルクの人格とプラチナディスクの’記録’を入れ替えることです」
ミリ「えっ・・・でもそれって・・・」
メル「でもそれだとフォルは不完全なままなんじゃないの?」
サダクビア「いいえ。私とサダルメルクはサダルスードが後から作り出した’モノ’ですので第3天使であるために必ずしも必要な’モノ’ではありません。ただ私達がいなくなってもサダルスードは自我を保っていられるでしょうか。自我を保っていられないのなら記憶が戻ったところで同じことではありませんか」
一同、困惑顔になる。
貴也「それでも、僕はフォルに戻ってきてほしい・・・。それにフォルがどんなことになっても守るって決めたんです。お願いします!どうかフォルの記憶を戻してやってください」
頭を下げる貴也
クレア「そうね。今のフォルは人を愛するということが出来る強い子よ。それにそばに居て支えてくれるパートナーもいるし、きっとお役目の重さにも耐えられるわ。そうでしょサダクビア」
サダクビア「そうですね。今のサダルスードなら可能かもしれませんね・・・。わかりましたサダルスードの記憶を戻すことにしましょう」
ミリ「ちょっと待ってよ。それだとあなた達2人は消えちゃうんじゃないの。そんなのって・・・」
貴也「あっ・・・」
顔を上げサダクビアを見る貴也。
サダクビア「いいのですよ優しいミリネール。元々私達はサダルスードのためだけに産まれてきたのですから、こうすることでサダルスードが幸せになれるのなら本望です。それに消えるわけではありません、プラチナディスクの中で眠りにつくだけです」
ミリ「でも・・・」
納得できないという顔のミリ
サダクビア「それでは約束してくださいミリネール。いつの日か未来で私達2人が目覚めても大丈夫な世界を作っておいてくれると」
ミリ「うん、わかった。その時になったら起こしてあげるから・・・」
サダクビア「ありがとうミリネール。では少し離れていてください」
サダクビア、プラチナディスクを胸に当てる。
サダクビア、貴也を見る。
サダクビア「こんなに想われているなんて、少しサダルスードがうらやましくもありますね」
貴也「えっ」
サダクビア、静かに目を閉じる。
プラチナディスクから光があふれ、サダクビアの体へと吸いこまれてゆく。
やがて光が消える。
貴也「フォル」
フォルの目がゆっくりと開いていく。
フォルの肩に手を置き、顔をのぞきこむ貴也。
貴也 「フォル、僕のことが解るかい?」
フォル 「はい・・・私の大切な貴也さんです」
フォルの瞳は緑から青に変わっていた。
貴也「フォル!」
おもわず抱きしめる貴也。
フォル「貴也さん・・・」
そっと抱き返すフォル。
ベル「フォル姉様」
リア「アネキ」
ミリ「フォル姉ちゃん」
次々に抱きついてくるベル、リア、ミリ。
メル「よかったわねフォル」
優しく微笑むメル。
クレア「おめでとうフォル。でもあなた大丈夫なの?ええっと、その・・・」
言いよどむクレア。
微笑むフォル。
フォル「大丈夫ですよクレア姉様。私には貴也さんがいてくださいますもの。あの2人の助けはもう必要ありませんから」
クレア「そう・・・なんにせよ良かったわ、フォルが無事で」
フォル「ありがとうございますクレア姉様」
貴也「大丈夫ですよクレアさん。フォルのことはずっと僕が守りますから」
メル「おっ貴也それってプロポーズ」
赤くなる貴也。
クレア「さてと話もまとまった事だし。宴会を始めるわよ」
ミリ「クレア・・・全然まとまってないって、それに何で宴会なの?」
クレア「めでたい時には宴会をする、それが古今東西の世の常識なのよ。ほらっ、わかったらとっとと準備して」
フォル「じゃあ何かお作りしますね」
クレア「ちょっと待ってフォル。主役の2人は邪魔だから準備が出来るまで貴也を連れてどっか行ってて、準備が出来たら呼ぶから」
その場に取り残されるフォルと貴也。
なんとなく見詰め合う2人。
何故か照れる貴也。
フォル「貴也さん・・・私のそばにずっと居てくださいますか?私のことをずっと支えてくださいますか?」
貴也「一生フォルのそばに居るよ。ずっとフォルのこと守るよ。だからフォルも僕のそばにずっと居て欲しい」
フォル「ありがとう貴也さん、私・・・うれしいです」
涙を流し、貴也の胸に飛び込むフォル。
強く抱きしめる貴也。
貴也「フォル、愛してる」
-END-