最後の審判

第5話 人類の選択
 
 

某A国 大統領執務室
 

秘書「大統領!たった今、国防総省から連絡がありました」

 大統領秘書が慌てて執務室に飛び込んできた。

大統領「来たか・・・。で、内容は?」

 大統領も待ちかねていた様子で秘書に先を急がせた。

秘書「はい、1ヶ月前より世界各地で確認されていた巨大人型が一斉に活動を開始。日本に向かっているとのことです」

大統領「そうか・・・。先ほどまた神託とやらが聞こえてきて審判を開始すると言っていたが・・・。その場所は日本か・・・」

秘書「どうなさるおつもりですか?あの女性は手を出すなと言っていましたが」

 ここには一ヶ月前に1人のベスティアリーダーが現れた。
 そして人類はこれから起こることに一切手を出さないようにと伝えて帰って行った。
 悪い様にはしないからと・・・。

大統領「決まっている。攻撃だ!。この地球をそんなわけの分からない連中に勝手にされてたまるか!」

秘書「しかし相手は人型の形状であるにも関らず音速を超え、しかも慣性をまったく無視した軌道を行えるのですよ」

 そのベスティアリーダーはここに来る途中、この国の空軍を手玉に取り、そして防衛網をやすやすと突破してみせた。
 この国の軍にまったくの被害を出さずにである。

秘書「それに未確認ながらもバリアーのようなモノが展開されていたとの報告もあります。
    そのようなモノにいったいどんな攻撃が有効といえるでしょうか?」

大統領「大丈夫だ。我国には最後の切り札がある」

秘書「それは・・・まさか!!」

大統領「・・・」

 大統領はその問いには答えなかった。
 しかし答えはその沈黙にあった。

秘書「いけません!!どのような理由があろうともそれだけは・・・」

 秘書は慌てて大統領を諌めようとした。

大統領「奴らの言う事はお前にも聞こえていただろう。奴らは人類を滅ぼすと言っていたのだぞ」

秘書「それは審判で人類がベスティアと審議された時ですが」

大統領「それにあの女も言っていただろう‘天使は生き終わらせれば人類は滅びない’と」

秘書「しかし、彼女は悪い様にはしないから手を出すなと・・・」

 この国に来たベスティアリーダーから話を聞いたのは、この秘書だった。
 だから彼にはそのベスティアリーダーが嘘をついているようには思えなかったのだ。

大統領「ふん。ようは天使を殺せばいいのだよ。それに島国一つで人類全体が助かるのだ。安いものじゃないか・・・」

秘書「・・・」

大統領「それに人類を導くのはあんな訳のわからん女共ではない。このA国でなければならないのだ・・・」
 
 
 
 

ハルマゲドン
 

 ベルは戦い続けていた。
 すでに10体以上の獣機を倒していたがレオニス自身の傷も深くなっていた。
 そしてベル自身の疲労も濃くなってきている。
 そんな最中、レオニスのレーダーが一つの飛行物体を感知した。
 しかし今のベルはそれに気がつくだけの余裕がなかった。
 
 

 その飛行物体は後方で控えているベスティアリーダー達も感知していた。

ミリ『メル姉ちゃん。これってもしかして・・・』

 メルのネガレイファントルの隣にいたミリがエルメスフェネックの中から問い掛けてきた。

メル『・・・おそらく・・・‘アレ’でしょうね・・・』

ミリ『だったら止めなくちゃ!』

メル『ダメよミリ!!』

 動きだそうとしたミリをメルは制した。

ミリ『どうして止めるのよメル姉ちゃん!このままじゃ・・・』

メル『ダメなのよ・・・。審判の最中は当事者以外はいかなることが起ころうとも絶対不可侵よ・・・』

ミリ『そんなの分かってる!・・・でも・・・』

メル『それにこれは人類が自ら選んで決定したことよ・・・。たとえそれがどんなに愚かな事でもね・・・』

ミリ『・・・』

メル『アタシ達は・・・もう見ていることしか出来ないわ・・・もう何も出来ないの・・・』

 これらのことが分かっていても、その場にいた獣機達は1体も動くことは無かった。
 
 
 
 

英荘
 

 英荘のベランダにはラオールとジゼルの姿があった。
 ジゼルはベランダに膝をつき、手を組合わせて祈っている。
 ラオールはベルが飛び去っていった方向をじっと見つめていた。
 
 

 貴也とマリアは英荘の庭にいた。
 そしてその飛行物体が英荘にいる貴也にも見える時がきた。

貴也「なんだろ・・・あれ・・・?」

 そして‘それ’が起こる。
 
 

 最初にまばゆい光が辺りを覆い。
 次に膨大な高熱が辺りを襲う。
 そして轟音が鳴り響き、熱風が荒れ狂う。

 
 
 

ハルマゲドン
 

 その光と熱と音と風はベルにも襲いかかってきた。

ベル『何!?』

 もちろん後方にいるベスティアリーダー達や、メルにも。

メル『みんな結界の出力を最大まで上げて!!』


 


 
 
 
 

英荘跡
 

 それからしばらく時がたち、辺りに静寂がやって来た。

マリア「ううっ・・・。いったい何が起こったの・・・」

 そしてマリアが最初に見たものは自分に覆い被さるようにしているアルデバラムの姿だった。

マリア「アルデバラム・・・」

 その姿は全身が焼け焦げており身体から煙を吐いていた。
 そして次に見たものは何もない荒涼とした風景だった。

マリア「えっ・・・。どういうこと・・・。ここって・・・どこなの・・・?」

 マリアは自分がどこにいるのか分からなかった。
 なぜなら辺りには英荘が影も形もなくなっていたから。

マリア「貴也?」

 そして何より自分の側に貴也の姿がなかったのだから。
 
 
 
 

ハルマゲドン
 

 ベルが最初に見たものは横倒しになった地面だった。

ベル「・・・いったい・・・何が起こったの・・・?」

 ベルは横倒しになっていたレオニスを立ちあがらせて現状の把握に努めようとしていた。
 しかし辺りを見回しても荒涼とした風景が見えるばかりでベルの混乱に拍車をかけるだけだった。

?『どうやら人類が核を打ちこんできたみたいだな・・・』

 そんなベルに『声』が届いた。
 『声』の方を向くと地面から獣機が埋もれた身体を起こしている所だった。
 その『声』は先ほどまで戦っていたベスティアリーダーのものだった。

ベル『そんな・・・人類が核を使うだなんて・・・』

ベスティアリーダー『事実だよ。その証拠に辺り一面が放射能で汚染されている』

ベル『そんな・・・』

 たしかに辺りの放射能レベルが異常なほど高くなっていた。
 しかしベルには信じられなかった。
 いや、信じたくはなかった。

ベスティアリーダー『くっくっくっ・・・。しかし人類も核を使うなんて何を考えているんだか・・・』

 ベスティアリーダーは声を上げて笑い出した。

ベスティアリーダー『しかもどうやら素因が死んだようだぞ』

ベル『えっ!貴也さんが・・・死んだ・・・?』

 ベルは慌てて英荘の姿を探し求めた。
 しかし見えたのは地面に倒れ伏したアルデバラムの姿と辺りをさ迷い歩くマリアの姿だけだった。

ベスティアリーダー『はははっ!人類が自らの手で素因が殺したんだ。人類は自らをベスティアだと認めた様なものだ!』

 その時レオニスのレーダーが複数の飛行物体を感知した。

ベスティアリーダー『どうやら人類はまだ核を使うつもりらしい・・・。どうするのだ第1天使。まだ愚かな人類のために戦うつもりなのか?』

ベル(アルデバラムはもうマリアを守れそうにない。だとしたら次の爆発が起こればマリアの命はない!)

 ベルは無言でレオニスを核ミサイルの飛んでくる方向に向けた。

ベル(それにフォル姉様と約束したもの・・・最後まであきらめない・・・負けたりしないって・・・)

 そしてベルは鐘を打ち鳴らすのだった。
 

<つづく>






解説




某A国

某A国です。深くつっこまないでください。
 

貴也の死

この話を書く時、貴也達英荘の人間をどうするか迷いました。
PC(E)版でもSS版でも最後の審判では貴也は出てきてはいません。
これは貴也はこの時にはすでに死んでしまっているからではないかと私は考えました。
しかしベスティアリーダーに殺されるのでは不自然なので人類に殺される事としました。
最初は最後の審判の前に英荘に天使が住んでいることがばれてベスティアな人類がやってきて殺される案があったのですが、
デビルマンのラストの様な凄絶なシーンになってしまうため核を使うことにしました。
ペンデのレーザー攻撃を使う案もあったのですが、ペンデの設定が思っていた以上に複雑であったため、断念しました。
貴也の死は最後の審判の天使やベスティアリーダーの手ではなく、人類の手で決まって欲しい思いが私にあったのかもしれません。
 

アルデバラム

基本的に最後の審判の最中は第1天使とベスティアリーダー以外は不可侵なのですが、
アルデバラムはマリアを守るというお役目を担っているために動く事が出来たのですが、マリアしか守ることしか出来ませんでした。
そのために英荘や貴也は見殺しにするしかなかったのです。(と、してください)
核の1撃だけで行動不能に陥ったのは、
マリアが自分の中に乗っていなかったため自身の結界のフィールドをマリアのために割いてあげなければならなかったからです。
レオニスが無事だったのはベルがレオニス内にいたためです。さすがに何発も一度に食らうと危ないでしょうが。
 

核を鐘で迎撃

鐘に空間を歪ませる能力を付けたのは、核を迎撃した後、安全に処理出来るようにするためです。