LalkaStory

レッスン

 

エルフィ
「いま、ライブサイトが空いているので――。
 ――あたし、行ってきます。」

エルフィ、メンテナンス代を稼ぐため、ソロライブに挑戦。
だが、上手くいかなかった。

エルフィ
「ごめんなさい、私、どうすればいいか分からなくて――。」
エルフィ
「あ――…。 う、うぅ――…。 ……んぅ。」

「エルフィ――どうしたんだ?
 ……エルフィ? エルフィ――!」

エルフィ、動けなくなる。

「……最悪。
 バッテリィーが切れてしまった――…。」

 

エルフィを背負って家に帰る羽野。
その道すがら、歌声が聞こえてくる。

 声 
「――キミの瞳しか、もう見つめない。」
聖名、ストリートで歌を歌っている。

聖名
「時間がふたりを別つまで――…。」

「……ふぅ〜ん。
 なかなか上手いじゃないか――…。」

その声に聞き入る羽野。

「……ん? 何だろう――…。
 何か――エルフィにないモノが、あの娘にはある。
 ……それって、いったい――…。」

 

羽野に気づく聖名。

聖名
「あなたは……スカウトの方じゃないわよね?
 ――とにかく、ありがとうっ。
 妹さんをおんぶしたまま――。
 ――最後まで、あたしの歌を聞いてくれて――…。」

「(独白)……妹? エルフィが?
     そうか……世間では、そう見られるのか。」
聖名
「あたしは、柿沼聖名――…。
 すぐそこにある居酒屋――。
 ――‘月ノ沢’っていうお店で、アルバイトしているの。
 よかったら、遊びに来てねっ。 それじゃあ――…。」
「――あ。待ってくれ。」

聖名
「はい?」

「キミの歌、すごくよかった。」

聖名
「……あはっ。
 改まってそういわれると、何だか照れちゃうけれど――…。」

「歌を――この娘に、教えてやってくれないかな?」

聖名
「……妹さんに? ふうん……別にいいわよ。」
聖名
「でも、あたしこれでも一応――。
 ――インディーズだけどCDも出しているし――。
 ――人サマからお金をいただいてライブ活動もしている――。
 ――プロなんだけれど?」

「ギャラは払う。いくらなんだ?」

聖名
「――‘時価’よ。じゃあ、ね。」

「あ、おい――‘じゃあ、ね’ じゃなくて――…。」
聖名
「これ以上は――妹さんが起きている時に、お話しましょう。
 妹さんは、歌のレッスンなんてイヤかも知れないし――…。
 そうだとしたら――。
 ――せっかくのお兄ちゃんの気持ちが、ムダになっちゃうでしょう?」
聖名
「あたしなら、ここ最近極貧で――。
 ――たいがいは月ノ沢に入っているから、
 よければお店に来て――…。
 最初の一杯目は、あたしがオゴってあげるわ。
 それじゃあ、またね――…。」

 

数日後、ストリートで再び聖名に会う。

エルフィ
「あっ、聖名さん。」

聖名
「あら…あなたの歌を聞かせてくれる?」
困ってしまうエルフィ。

聖名
「――どうして、恥ずかしがるの?
 普段は、電脳世界でアイドルしているんでしょう?」

エルフィ
「でも……お客様から、直接見られるなんて――…。」

聖名
「――直接も間接も関係ないのっ!
 アイドルは、見られてナンボの商売でしょうが――…。」

エルフィ
 ……もう、いやあん。
 どうして、こんな――‘恥ずかしい’なんて感情があるの?
 いじわる? いじわる?」
歌うエルフィ。

エルフィ
「このきれいに見える世界の中で――…。」

聖名
「ん、いい――…。 ……なかなかね。」
聖名
「エルフィ――…。 また今度、レッスンしましょうね。」

エルフィ
「はい――…。 聖名さん、ありがとうございました。」

 

「ソロライブ」へ進む    戻る