LalkaStory

サイバーアイドル

 

エルフィ
「あの――…
 バトルライブって、なんですか?」

「……」

史依
「ふうん――…。
 このコ――なんにも知らないのね。」
史依
「バトルライブのことを知りたいのなら――
 ――この先のお店に行ってみるといいわ。」

 

風俗店「FirstDrop」で、ADAを見かける。

「あれは……」
「エルフィ。――ここで、待っていてくれ。」

エルフィ
「……。」

 

「キミは――…。」

愛夜
「え――…。」

「……‘ADA’だろう? なぜ、こんなところにいる?」

愛夜
「――…。」
過去を語りはじめる愛夜。

愛夜の声
「……まだ、バトルライブなんてコトバが
 使われていなかった頃のことよ。

 詳しい経緯は分からないけれど――…。
 ネットワークで知り合った見も知らない相手同士が、
 わたしたち――サイバーアイドルの存在を賭けて、
 勝負することが流行始めたのよ。

 最初は、単に形状やイメージ等の
 データのやり取りで済んでいたのだけれど――。
 ――やがて、それが次第にエスカレートして――…。
 わたしたち自身が、賭けの対象となってしまったのよ。」
愛夜
「――イヤァーッ!」

愛夜の声
「サイバーアイドルとはいっても、当時のレベルでは――。
 ――複雑な歌唱用のアルゴリズムを、
 与えられていたワケではなかったわ。
 わたしにも‘ウイスパー’という特性が、あるだけ――…。
 うふふ……わたし、すぐに負けちゃったの。」
「……」

そう、それがバトルライブなのだ。

勝てば、相手のバーチャルライブの出演料と
相手のパーソナリティデータを手に入れることができる。

だが、負けた場合には、強制的に年齢制限サイトに移され、
相手のマスターに陵辱される様をライブで配信されてしまう。
ただし、相手のマスターが、それを望まない場合もあるが――…。
「それで、相手のマスターに――…」

愛夜の声
「……そうよ。
 一度犯され、陵辱されたサイバーアイドルがライブを行っても――。
 ――もう、観てくれるお客さまなんていない。
 それで――わたしは、このお店で働くことになったの。」
「でも、キミは――ここにいる――…
 デバイスを奪われなかったのか?」

愛夜の声
「わたしは旧式だから、‘ADA’素体のように――。
 ――他のパーソナリティデータを上書きして――。
 ――孵化しなおすことはできないの。
 メモリデバイスの仕様もフォーマットも違うし――…。
 だから……わたしのままで、いられたのよ。」

 

「たとえ辱めを受けたとしても――。
 ――キミ自身のパーソナリティは、奪われずに済んだんだ。
 キミのマスターは、よかったじゃないか?」

愛夜
「……」

「……キミのマスターは、どうした?」

愛夜
「……いなくなっちゃたの。」
愛夜
「……でも、もういいの。
 わたし、うれしいのよ。
 ――だって、ここに来たお客さまのことを愛せるんだもの。
 うふふ……わたしにも、愛せる人がいてうれしいわ。
 それも、たくさん――…。
 ……わたしって、欲張りかしら?」

「あ――…。」
エルフィリア・回想
「――わたしも愛しています。
 うれしいです、わたし――愛せる人がいて。」

「どうして――…。
 ……前にも、同じようなセリフを聞いたことがある。
 キミたちは、創られているのに、どうしてそんな風に――…。」
愛夜
「ふふ……おかしいっ。
 創造主は、そうなさいって――…。
 ――そのタメに、わたしたちはいるのだもの。
 違っていて……?
 ……‘人’は、違うのかしら?」

「う、ん――…。」

 

愛夜
「外に待たせている、ADA――…。
 とっても、ステキな方ね。」

「……。」

愛夜
「あの子にもライブをさせるのですか?」

「――ああ。」
愛夜
「そうですか……。」

「でもオレは――…。」

愛夜
「うぅん、いいです。」
愛夜
「でしたら――。
 ――私の‘ウイスパー’を使ってください。」

「え、でも――…。」

愛夜
「――いいんです。」
愛夜
「さようなら、優しいひと――…。」

 

エルフィ
「あの――…。」

「――…。」
「大丈夫だよ。キミを奪われたりはしない。
 キミが勝ち続ける限り、
 キミはキミ自身でいられるんだ――…。」

エルフィ
「――はい。」

 

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