LalkaStory

バトルライブ

 

日曜日、先進情報技術研究計画局本局を通りがかる。

三門
「――よう、いいところで会った。ちょっと、オレに付き合えよっ。」

「お、おい、ちょっと――。」

 

 コンサート会場に連れてこられる羽野とエルフィ。

「――だから、いいって!
 他のサイバーアイドルのデビューコンサートなんて――。
 ――オレには興味がないんだからっ。」

三門
「まぁ、そういうなって――…。
 全国シェアで5本の指に入る
 大手プロバイダが、本腰を入れて――。
 ――本格的にデビューさせるっていう、
 超大型新人アイドルなんだ。
 まだデビュー前だというのに――。
 ――すでにファンクラブの会員数が、3万人を越えたらしいぞ。」

「……それって、もうデビュー済みってことじゃないの?」

 

紫桜音
「たったひとりの天使と出会い――…。」

「ん……」

紫桜音の歌声が聞こえてくる。

紫桜音
「――キミの姿しか、もう追わない。」
三門
「‘本日をもって正式デビューとする’――だって、さ。
 ファンクラブの会報誌には、そう書いてあるよ。」

「――大手プロバイダが絡んでいるワリには――。
 ――意外に、ファンクラブの会員数が少ないんじゃないか?」

三門
「ん……でも、リアルな数字だと思うけど、ね。
 会員数3千万人という方が、ウソっぽい――…。」

「――どうせ、金とネットワークに飽かして
 デビューするアイドルだからな。
 ファンクラブの会員数なんて、これからどうにでも――。」
シュッ。

リンゴが羽野めがけて飛んでくる。

エルフィ
「――危ない、避けて!」

「――おっと。」
紫桜音
「――クチコミで増えたんだものっ。」

「ん?」

紫桜音
「紫桜音のファンは、クチコミで増えたんだものっ。
 みんな、紫桜音の歌を好きになってくれたんだから――…。」
三門
「……すごい。
 エンロールも、していないのに――。
 ――初対面で、オレたちの話を完璧に理解しているなんて――…。
 やっぱり、大手プロバイダがデビューさせるだけのことはあるな。」

「こんな、本物のリンゴまで仕込んであるし、ね。
 さすがに、舞台装置にも金がかかっている。」
「ところで――このリンゴは誰に指示されて、オレに投げたんだ?
 お前のマスターはどこにいる?」

紫桜音
「――紫桜音が自分でやったんだよっ。
 アナタなんか、大嫌い!」

 

客たちの声
「……ざわざわざわ――…。」

警備員の声
「――いた。あそこだ――!」

三門
「そろそろヤバイかも――…。」
エルフィ
「――警備員たちがこちらに――…。」

三門
「――行くぞ、宏也!」

「オレは――お前のパーソナリティに、興味が沸いたよっ。
 また、な――…。」

紫桜音
「んぅ――…。」
エルフィ
「……あの娘。
 デビューコンサートを台無しにされて、怒っていないかしら?」

 

マスター
「紫桜音ちゃん――…。
 ……気にすることはないからね。

紫桜音
「マスター、でも――…。」

マスター
「あいつは、ここ最近売り出しているパーソナリティデザイナーだ。
 名前は、羽野宏也。超一流だという評判だ。
 確かに……エルフィタイプのソロライブを観た時には――。
 ――このボクですら、わずかながらに感動を覚えたけれど――…。」

紫桜音
「……マスターが?」
紫桜音
「――紫桜音も、バーチャルライブに出たい!」

マスター
「……ん。 それなら――紫桜音ちゃん専用の
 ライブサイトを建てようか?」

紫桜音
「そんなのって、何だかズルくない?」
紫桜音
「紫桜音は――バトルライブで負けちゃう?」

マスター
「そんなことは――…。」

紫桜音
「……いい?」

マスター
「う、うぅ〜ん――…。」

紫桜音
「――やったっ。ありがとう、マスター!」

 

遊園地、ネットに接続するエルフィ。

エルフィ
「あ――…。」

「あ、紫桜音タイプだ――…。」
「いくよ、エルフィ。」

エルフィ
「はい。わたし、がんばりますっ――…。」
バトルライブ・紫桜音タイプ
「1/fゆらぎ」と「ステージ衣装」と「ウイスパー」を使って、
バトルライブに勝利する。
エルフィ
「――ライブは成功しました!」

紫桜音
「ああん……負けちゃった――…。」

紫桜音デバイスを手に入れた。
「よかったよ、エルフィ。」

エルフィ
「はい――。」

 

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