LalkaStory

孵化

 

「よし、紫桜音を孵化させてみようか。」

エルフィ
「……はい――…。」

 

三門の研究室にやってくる。

三門
「おう、よく来たな。」

「紫桜音を孵化させたいんだけど。」

三門
「OK――…。」
三門
「それじゃあ、まず‘卵’のある保育室に行って――。
 ――‘ADA’のパーソナリティを入れ替えるけれど――…。」
三門
「……いいのか? その娘は――エルフィは、
 そんなによく育っているというのに――…。」

エルフィ
「――…。」

三門
「肌や髪の毛のつやを見れば、お前にだってわかるだろう?
 パーソナリティと‘ADA’素体が、よく馴染んでいる証だよ。」
三門
「どうせなら‘ADA’素体をもう一体買ってだな――。
 ――って、ダメか。
 いま一般市場に出回っているのは、すべて‘レプリカ’だし――…。
 お前にあげたその‘オリジナル’と同等の‘ADA’素体なんて――。
 ――市販されていないからなぁ。
 それに――…。
 ……価格もケタ2つ違うし、ね。」
「え。 ‘オリジナル’の‘ADA’素体って、
 そんなに高価なモノだったの?」

三門
「何だよ……いままで、知らなかったのか?
 オレに、感謝してくれてもいいよ。
 いまや珍獣の代わりに、政治的にも使われているんだからな。」
「あ。 それって、何ていうんだっけ?」

三門
「‘ポリィティカルアニマル’、つまり‘政治的動物’――…。
 ――熊とか鳥とか。 義務教育で、習っただろう?」

「そうだった、かな――…。」
「じゃあさ、‘ポリィティカルアイドル’って知っているか?」

三門
「つまり――‘政治的なアイドル’ということ?
 そう呼ばれているかどうかは知らないけれど――。
 ――‘オリジナル’の‘ADA’素体が――。
 ――そんな使われ方をしているのは、前に話した通りさ。
 その‘器’というか、‘ボディ’に――。
 ――アイドルの‘ハート’を――。
 ――パーソナリティを与えてやれば――。
 ――‘ポリィティカルアイドル’に、なるんじゃないのか?」

 

孵化室で、紫桜音の孵化を始める。

「いったい、どのぐらいの時間で孵るんだ?」

三門
「2つある‘卵’の片方だけは――。
 ――当時とは、比べモノにならないぐらい早くなったよ。
 テスト結果では、エルフィレベルで約5分――…。
 以前は、約一週間もかかっていたなんて――。
 ――信じられない進歩だろう?」
――‘ADA’紫桜音誕生――
紫桜音
「ん、もう――…。
 ――あまり、こっちを見ないでよっ。」

「これはこれは――…。
 ――ずいぶん、可愛らしい天使が孵ったな。」

 

紫桜音
「ねぇ――…。
 ――どこか、おもしろいところへ
 連れて行ってよっ。」
紫桜音を連れて歩く。

紫桜音
「‘外’に出るって、ステキね――…。
 もう電脳空間には、戻りたくな〜い。」
美術館で、ネットに接続。

紫桜音
「あ――…。」

「史依タイプがライブをしている――…。」
紫桜音
「ん――がんばるっ。
 あたし、歌ってきま〜す。」
バトルライブ・史依タイプ
紫桜音
「あぁ……楽しいライブだった。」

史依
「う、うぅ……アタシの負け。」

史依のデバイスを手に入れた。
「よかったよ、紫桜音。」

紫桜音
「うんっ。」

 

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