マスターフォル:真のフォルシーニア
○貴也の部屋(続き)
フォル「私が……七人?」
フォル「私が……七人?」
フォル「私が……七人?」
フォル「私が……七人?」
フォル「私が……七人?」
フォル「私が……七人?」
フォル「私が……七人?」
ミリ「みんな同時にしゃべらないでよ!」
貴也「フォルの声がステレオで聞こえる……」
顔を見合わせるフォルたち。
フォル「…ずらしましょうか?」
フォル「……ずらしましょうか?」
フォル「………ずらしましょうか?」
フォル「…………ずらしましょうか?」
フォル「……………ずらしましょうか?」
フォル「………………ずらしましょうか?」
フォル「…………………ずらしましょうか?」
ベル「ずらすのも、ちょっと……」
貴也「フォルの声がエコーで聞こえる……」
リア「輪唱かも?」
メル「よけいに頭に響くわ……」
困っているフォルたち。
そのフォルたちを見渡す一同。
ベル「6人も余分にフォル姉様が……」
クレア「まったく、なんてことを……」
リア「フォル2一人でも手を焼いたのに。」
貴也「今度は6人も……」
馨子「でも、どうして? どうして6人も復元されちゃうの?」
天使達&貴也「ん……」
答に困る一同。
にやりと笑うメル。
メル「考えたわね、ミリ!」
一同「え?」
メル、ばっと身構えて、天使達と対峙する。
メル「形勢逆転よ! 今度はこっちの方が人数が多いんだから!」
クレア「し、しまった!」
ベル「ミリの差し金ね!」
リア「最初からそのつもりだったのか!」
貴也「ま、まずい!」
メル「ふふ、遅いわね!」
メル、フォルたちに向かって、
メル「さあ、フォルたち、天使達を始末なさい!」
天使&人間「うわあ!」
身構える天使達&人間達。
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
だが、フォルたちは反応せず、お互いに顔を見合わせている。
一同「え?」
馨子「どういう事?」
貴也「大丈夫……なのかな?」
メル「あ!」
メル、気づく。天使達を威嚇しながら、後ろにいるミリに、
メル「ミリ、早く!」
一同「?」
メル「アンタの命令しか聞かないように作ったんでしょう?」
天使&人間「!」
合点が行く天使達&人間達。
ベル「そういうことなのね!」
貴也「やっぱりまずい!」
再び慌てる天使達&人間達。
クレア「今、神機を呼ばれたら…!」
リア「貴也!」
馨子「いやあぁ!」
メル「ミリ、命令なさい! 6人のフォルに!」
天使&人間「うわあ!」
ミリの命令を怖れて身構える天使達&人間達。
……ミリ、反応無し。
天使&人間「?」
メル「ミリ!」
ミリ「……」
メル「?」
メル不審に思って後ろを振り向く。
ミリ「うぅ……」
と、ミリも同様に、攻撃を怖れて身構えている。
メル「……アンタが怖れてどうするの?」
ミリ「だってぇ…」
メル「早く命令なさい! チャンスでしょ?」
ミリ「……するの?」
メル「するの。」
ミリ「うぅ……」
ミリ、なぜだかためらっているが、しぶしぶと、
ミリ「やれ! フォルたち!」
天使&人間「うわあ!」
三度(みたび)身構える天使達&人間達。
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
動かないフォルたち。
一同「?」
様子を見守る一同。
フォルたち、ミリを見て、
フォル「ミリ? 悪さはしないと約束したでしょう?」
フォル「ミリ? 悪さはしないと約束したでしょう?」
フォル「ミリ? 悪さはしないと約束したでしょう?」
フォル「ミリ? 悪さはしないと約束したでしょう?」
フォル「ミリ? 悪さはしないと約束したでしょう?」
フォル「ミリ? 悪さはしないと約束したでしょう?」
フォル「ミリ? 悪さはしないと約束したでしょう?」
おびえて涙ぐむミリ。
ミリ「やっぱり、思った通りだぁ……」
メル「な、なんで?」
天使達&人間達も驚いている。
貴也「あれ? 大丈夫…なのかな?」
メル、状況を理解できず、ミリに問いただして、
メル「どういうこと?」
ミリ「う」
メル「だって、データ、書き換えてあるんでしょう?」
ミリ「だから、パソコンが爆発しちゃったから、データを
書き換えられなかったんだもん。」
メル「そうじゃなくて!」
ミリ「?」
メル「フォル2を作った時よ! もう既にディスクのデータを
書き換えたんでしょう?」
ミリ「うぅ」
ミリ、冷や汗。
ミリ「……だって、出来なかったんだもん。」
メル「え?」
リア「あ、そうか。」
リア、合点が行ったようだ。
リア「プロテクトだよ。プラチナ・ディスク、上書きできないんだ。」
貴也「どういうこと?」
リア、説明して、
リア「アネキのデータが収めてあるのに、普通のパソコンで
上書きできるようになってるわけないだろ?」
貴也「そっか、そうだよね。」
リア「それをできるのは、グラフィアスだけだよ。」
メル、まだ納得できない様子で、
メル「じゃあ、フォル2の時は、どうやってデータを書き換えたの?」
ミリ、言い訳するように、
ミリ「だから、パソコンでRAMに読み込んで、RAMの中のデータを
書き換えないといけないんだもん。だから、パソコンが必要だったのに。」
メル、頭を抱えて、
メル「まったく、ホントに、抜けたベスティアリーダーね。」
ミリ「う、うるさいわね。」
ベル、フォルたちを見回し、おそるおそる聞いて、
ベル「じゃあ、フォル2みたいなことは、しないのね。」
フォル「はい、大丈夫ですよ? ベル。」
フォル「はい、大丈夫ですよ? ベル。」
フォル「はい、大丈夫ですよ? ベル。」
フォル「はい、大丈夫ですよ? ベル。」
フォル「はい、大丈夫ですよ? ベル。」
フォル「はい、大丈夫ですよ? ベル。」
フォル「はい、大丈夫ですよ? ベル。」
ベル「あぁ、よかったぁ……」
馨子「ふう、助かった……」
一同、フォルたちを見渡す。
貴也「ということは?」
メル「ということは……」
メル、引きつって、
メル「全員、本物?」
ミリ、泣きそうになって、
ミリ「全員、アタシたちの敵……」
動揺するメルとミリ。
メル「うう、ま、まずい!」
ミリ「こっちが逆にやられちゃう!」
メル「こんなにいたら、太刀打ちできないわ!」
ミリ「消えてぇ!」
その言葉に、動揺するフォルたち。
フォル「消える?……」
フォル「消える?……」
フォル「消える?……」
フォル「消える?……」
フォル「消える?……」
フォル「消える?……」
フォル「消える?……」
動揺して、うつむいてしまうフォルたち。
フォル「私が……消える?」
フォル「私が……消える?」
フォル「私が……消える?」
フォル「私が……消える?」
フォル「私が……消える?」
フォル「私が……消える?」
フォル「私が……消える?」
貴也、動揺するフォルたちに気づく。
貴也「フォル……」
他の一同はそれに気づいていないようだ。
クレア、メルとミリに、
クレア「何言ってんの? いまさら慌ててどうすんのよ。
元々アンタ達なんか、フォル一人にだって、かないやしないんだから。」
ミリ「うぅ……」
クレア「それに。」
クレア、フォルたちを見る。
フォルたち、もう既に平静を保っている様子。
クレア「フォルはそんなことしないわよ、ねえ?」
それに答えて、にこりと笑うフォルたち。
ミリ「よかった……」
安堵するミリとメル。
だがミリはまだ心配そうに怖れている。
貴也「……」
貴也、フォルたちの様子を見る。
フォルたち、平静を保っている様子。
貴也「……」
ミリ「うぅ」
貴也、ミリがまだフォルたちを怖れているのを見て、
貴也「……とりあえず、天使の側もベスティアリーダーの側も、
怖れる必要はないようだね。」
一同「ふう……」
一息つく一同。
馨子、7人のフォルに感心して、
馨子「……本当に、フォルさんってディスクから生まれるのね……」
馨子、7人のフォルをまじまじとみつめる。
フォル「あ、あの……」
フォル「あ、あの……」
フォル「あ、あの……」
フォル「あ、あの……」
フォル「あ、あの……」
フォル「あ、あの……」
フォル「あ、あの……」
見つめられて、困っているフォルたち。
一同も同様にフォルたちを見つめる。
ベル「フォル姉様が7人も……」
クレア「まったく、とんでもないことをしてくれたわねえ。」
馨子「でも、どうして6人も復元されちゃうの?」
貴也「うん……。一人だけ復元されるなら分かるけど……」
ベル、ミリに怒って、
ベル「ミリ! あなたのせいよ?」
ミリ「ア、アタシじゃないもん!」
ベル「あなたがフォル姉様を6人も作ったんでしょ!」
ミリ「ち、違うもん、そんな暇なかったもん。」
ベル「?」
ミリ「そんなことする暇があったら、ちゃんとデータを書き換えて、
『ベスティアリーダー側の第三天使』に作り替えておいたもん!」
ベル「ん……そっか。それもそうよね。」
クレア「でも、『フォル3』を作り出そうとしたのは事実でしょ?」
ベル「そ、そうよ! それがすべての原因なんだから!」
ミリ「うぅ」
貴也「でも、実際に復元されたのは……」
メル、フォルたちを順に数えて、
メル「フォル3、4、5、6、7、8、9……」
クレア「違うでしょ! 『8』までよ! 本物がいるんだから!」
メル「ん、でも……」
見渡すメル。一同も見渡す。
フォルたちも自分たちと顔を見合わせて、
フォル「みんな、私とそっくり……」
フォル「みんな、私とそっくり……」
フォル「みんな、私とそっくり……」
フォル「みんな、私とそっくり……」
フォル「みんな、私とそっくり……」
フォル「みんな、私とそっくり……」
フォル「みんな、私とそっくり……」
クレア「う」
リア「そりゃ、そうだよ。同じディスクから復元されたんだから。」
七人のフォルを見渡す。
馨子「だれが本物なのかしら?」
ベル「……分からないわ。」
リア「見た目だけじゃ、全然分からないよ…」
ミリ「アタシも分かんない……」
困る一同。
リア「光に包まれて、それが消えたと思ったら……」
ベル「もう既に貴也さんの回りに、フォル姉様たちがいたんだもの。」
馨子「みんな並んじゃったから、区別つかないわよね……」
ひらめくクレア。
クレア「そうだわ! 貴也? あんた、見てたでしょう?」
貴也「え?」
クレア「一人だけ、パソコンから離れていたんだから。」
リア「あ、そっか。」
ベル「どのフォル姉様なの?」
期待する一同。
貴也「うぅ……」
貴也、冷や汗。
リア「え?……まさか。」
貴也「ゴメン……分かんない…」
ベル「ど、どうして?」
貴也「まぶしくて、目、つむっちゃって……」
一同「えーーーー!」
頭を抱える一同。
ベル「どうしてちゃんと見ておいてくれないのよ!」
貴也「だって、6人も復元されるなんて、思わなかったんだもん。」
リア「もう、まったく…」
クレア「役立たずねぇ。」
貴也「うう…」
フォルたち、貴也を気遣って、
フォル「クレア姉様? そんな風におっしゃらないでくださいな。」
フォル「クレア姉様? そんな風におっしゃらないでくださいな。」
フォル「クレア姉様? そんな風におっしゃらないでくださいな。」
フォル「クレア姉様? そんな風におっしゃらないでくださいな。」
フォル「クレア姉様? そんな風におっしゃらないでくださいな。」
フォル「クレア姉様? そんな風におっしゃらないでくださいな。」
フォル「クレア姉様? そんな風におっしゃらないでくださいな。」
ひるむクレア。
クレア「うぅ、迫力あるわね、7人もいると……」
貴也「あ、ありがとう、フォル。」
フォル「はい。」
フォル「はい。」
フォル「はい。」
フォル「はい。」
フォル「はい。」
フォル「はい。」
フォル「はい。」
クレア、一息ついて、
クレア「……で?」
貴也「ん……」
貴也、フォルたちを見る。
フォル「私、これからどうすればいいのかしら……」
フォル「私、これからどうすればいいのかしら……」
フォル「私、これからどうすればいいのかしら……」
フォル「私、これからどうすればいいのかしら……」
フォル「私、これからどうすればいいのかしら……」
フォル「私、これからどうすればいいのかしら……」
フォル「私、これからどうすればいいのかしら……」
貴也「どうすればって、言われても……」
クレア「確かにこのままじゃ困るわよねえ。フォルが7人もいたんじゃ……」
貴也「困ったなあ……」
考え込んでしまう貴也。
ベル「でも、どうして6人も復元されたのかしら?」
馨子「ミリちゃんは、そのつもりはなかったのよね?」
ミリ「うん。それどころか、何も出来なかったんだもん。」
リア「じゃあ、どうして……」
考えの浮かばない一同。
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォルたち。話の成り行きを見守っている。
貴也、フォルたちの顔をうかがう。
貴也「フォル……」
貴也、顔色を暗くする。
○貴也の回想
フォル「消える?……」×7
動揺して、うつむいてしまうフォルたち。
フォル「私が……消える?」×7
貴也、動揺するフォルたちに気づく。
貴也「フォル……」
○回想終わり
貴也「……」
まだ考え込んでいる一同。
貴也、みんなに話を切り出して、
貴也「でも、みんな、もう一人欲しいって言ってなかったっけ?」
一同「え?」
貴也「ほら、『自分だけのフォル』が欲しいって。」
顔を見合わせる一同。
ベル「そりゃあ、さっきはそう言ったけれど……」
あきれ返るクレア。
クレア「なあに? アンタたち、そんな事話してたの?」
ベル「うん、でも……」
リア「やっぱり、まずいよね?」
馨子「7人もいられたら、逆に困る…わよね?」
ミリ「第三天使がこんなに一杯いるのは困るもん!」
メル「少なくとも、『7人』ってのは余分よね。」
貴也、ちょっと考えて、
貴也「7人いるから、一人に一人ずつだよ? ちょうどいいと思うけど?」
ベル「ん……。でも、部屋が足りないし……」
貴也「共同リビングをつかえば、7部屋あるよ?」
リア「あ、そっか。」
貴也「ベスティアリーダーのミリとメルまでが一緒に住むんだよ?
フォルが住むことに反対する理由はないと思うけど?」
ベル「そ、そうよね……」
その言葉に心を動かされるベル、リア、馨子。
ベル&リア&馨子「いいかも……」
メル&ミリ「だめよ!」
貴也「まあまあ。」
想像しているベル、リア、馨子。
ベル「少しくらいなら、一緒にいてもいいかもしんない……」
リア「ちょっとくらい狭くても、我慢できるかも……」
馨子「どうせ相部屋なんだものね。」
貴也「そうだよね。」
戸惑っているフォルたち。
フォル「あの……」
フォル「あの……」
フォル「あの……」
フォル「あの……」
フォル「あの……」
フォル「あの……」
フォル「あの……」
クレア、ジト目で見つめて、
クレア「アンタたち、分かってる?」
ベル&リア&馨子「ん?」
クレア「7部屋よ?」
ベル「ちょうどでしょ?」
クレア「14人よ?」
リア「ちょうどだろ?」
クレア「一人に一人ずつよ?」
馨子「ちょうどよね?」
クレア「……フォルと貴也が相部屋ってことよ?」
ベル&リア&馨子「ああっ!」
貴也「あ、そっか。」
ベル&リア&馨子「絶対ダメーーーー!」
喜ぶ?ミリとメル。
ミリ「いいわね、それ。ベスティアになれるわよ?」
メル「ケモノじゃなくてケダモノ。」
うろたえる貴也。
貴也「そ、そんなことしないもん。」
ベル「信用できないわね!」
白い目で見る双子たち。
貴也「ボクって、信用されてないのかな?……」
馨子「そういう訳じゃないんだけれど……」
馨子、苦笑いしている。
貴也「そんなこと、しないよ? ボク。」
双子たち、さらに白い目で貴也をにらむ。
双子「んーー?」
貴也「う」
双子たち、貴也をビシッと指差して、
双子「前に、フォル姉様/アネキと添い寝した!」
貴也「あ!」
馨子「え!」
うろたえる貴也。
貴也「あ、いや、あれは、そういうのじゃなく!」
眉をひそめるミリとメル。
ミリ「……なんで、それでベスティアじゃないの?」
メル「ケダモノはケモノじゃないのかしら?」
貴也「違うって!」
馨子「私……信じてたのに……」
貴也「だから、違うってば!」
双子たち、顔を見合わせ、うなずいて、
リア「こうなったら、消えてもらうしかないな。」
ベル「フォル姉様を貴也さんから守るためだもの。」
貴也「うう、誤解だぁ……」
クレア、ふふん、と笑って、
クレア「ま、そういうことだから。」
貴也「うぅ」
クレア「さて、偽物には消えてもらおうかしら?」
クレア、フォルたちを見渡して……
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
クレア「……あれ?」
困るクレア。
クレア「えっと?」
迷っているクレアを見て、みんなも困ってしまう。
一同「う……」
クレア「誰が本当のフォルなの?」
フォル「そう言われても……」
フォル「そう言われても……」
フォル「そう言われても……」
フォル「そう言われても……」
フォル「そう言われても……」
フォル「そう言われても……」
フォル「そう言われても……」
フォルたちも困っている。
リア「だから、見た目じゃ、区別つかないんだってば。」
馨子「そ、そうみたいね……」
区別できないでいる一同。
ベル「あ!」
ひらめくベル。
ベル「私に任せてっ!」
一同「お?」
ベル「簡単よ。だって天使は嘘をつけないんだもの!」
リア「あ、そうか。」
ベル、フォルたちの前に躍り出て、
ベル「自分が本物だと思うフォル姉様! 手、あげてっ!」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
反応の無いフォルたち。
ベル「あれ?」
お互いに顔を見合わせるフォルたち。
ベル「あ、あのー。本物は……」
誰も答えない。
ベル「ど、どうして?」
フォルたち、うつむいて、
フォル「私はまだ完全ではありませんから、本物とはいえません……」
フォル「私はまだ完全ではありませんから、本物とはいえません……」
フォル「私はまだ完全ではありませんから、本物とはいえません……」
フォル「私はまだ完全ではありませんから、本物とはいえません……」
フォル「私はまだ完全ではありませんから、本物とはいえません……」
フォル「私はまだ完全ではありませんから、本物とはいえません……」
フォル「私はまだ完全ではありませんから、本物とはいえません……」
ベル「あ」
冷や汗のベル。
クレア「……嘘は言っていないわねぇ。」
ベル「うぅ」
リア「アタイ、まだディスクを完全には直してないし。」
馨子「うーん、あてが外れたわね。」
ベル「何で直しておかなかったのよっ!」
リア「そんなに簡単に直るかよ!」
ベル「もう!」
馨子「まあまあ。」
馨子、ベルとリアをなだめて、
馨子「だいたい、こういう場合に『本物か』って聞いても区別できないのよ?
偽物は嘘をつけるんだから。」
ベル「あ、そうよね…」
馨子「だから、本物も偽物も全員が『本物だ』って答える……あれ?」
こんがらがる馨子。
クレア「『本物じゃない』って答えたわよねぇ。」
馨子「えっと……」
貴也「どういうこと?」
ベル「本物が嘘を付いている、ってこと?」
クレア「だから、嘘は言ってないのよ?」
ベル「あ、そうか……」
リア「じゃあ、偽物が嘘を付いていない、ってこと?」
クレア「だったら、偽物じゃないでしょ?」
リア「あ、あれ?」
こんがらがる一同。
馨子「あーん、訳分かんなくなってきた……」
フォルたちも困っている。
フォル「すみません、私のせいで……」
フォル「すみません、私のせいで……」
フォル「すみません、私のせいで……」
フォル「すみません、私のせいで……」
フォル「すみません、私のせいで……」
フォル「すみません、私のせいで……」
フォル「すみません、私のせいで……」
馨子「あ、そんな、謝らなくっても……」
苦笑する馨子。
馨子「ホントに丁寧ね、フォルさんって。ますます区別付かないわ…」
はっと気づく貴也。
貴也「ちょっと待って?」
一同「?」
考える貴也。
貴也「ひょっとして、それ、全員が本物ってこと?」
一同「えぇ?」
貴也「全員が全員、自分が偽物だとは思っていないんじゃ……」
ベル「そんなぁ。」
リア「そんなバカな。」
貴也「でもそうだよね? 理屈上は。」
リア「ん……」
考えこんでいる一同。貴也、説明して、
貴也「同じディスクから生まれて、そしてデータの書き換えもされていない……
全て同じフォルなんだよね。だから、ボクたちには区別できないし……」
貴也、フォルたちを見て、
貴也「それどころか、本人でさえ、自分が偽物だとは思っていない……
そういうことなのかも?」
クレア「ま、まさか!」
ベル「全員、自分が本物だって思っている、ってこと?」
リア「そ、そんなぁ…」
改めて、フォルたちを見つめる一同。
フォル「え、あ、あの……」
フォル「え、あ、あの……」
フォル「え、あ、あの……」
フォル「え、あ、あの……」
フォル「え、あ、あの……」
フォル「え、あ、あの……」
フォル「え、あ、あの……」
困っている様子のフォルたち。
クレア「まいったわね、どうするのよ!」
リア「消えてもらうって言っても……」
ベル「誰が本物か分からないことには、どうしようもないわ?」
考え込む一同。
馨子「何か他に区別の方法はないのかしら。」
クレア、フォルたちを見つめて、
クレア「外見は同じ…」
リア「同じディスクだからね。」
クレア「服装も同じ…」
ベル「さっき、正装に着替えちゃったから。」
クレア「立ち位置も同じ…」
馨子「貴也くんも目をつむっちゃってたし……」
貴也「ご、ごめん……」
クレア「他に区別できるものって……」
一同「んぅ……」
貴也、ミリとメルを見て、
貴也「ミリとメルは?」
ミリ「そんなの、しらないもん?」
メル「そうそう。」
貴也「うぅ」
リア「聞いても無駄だよ。」
クレア、溜め息を付いて、
クレア「アンタたち? ちょっとは協力しなさい? 区別できないと
フォルが7人のままなのよ?」
ミリ「それは困るかも……」
メル、ふふん、と笑って、
メル「区別、付かなくてもいいんじゃない? とりあえず消しちゃえば。」
一同「え?」
メル「私たちは別に、誰が消えてくれても構わないもの。それが
本物であろうと、偽物であろうとね。」
ベル「あ、ひどーい!」
メル「だって、そうでしょう? 『フォル2』みたいなフォルはいないんだもの。
誰が消えても同じよ。」
ミリ「そうね、そうそう。」
ベル「うぅ。」
リア「あ、そうだ!」
リア、思い出して、
リア「フォル2って、目の色、赤かったよね?」
貴也「じゃ、じゃあ、目の色、違うかも!」
一同、フォルたちの目を見比べる。
貴也「あ……」
全員、ブラウンの目だ。
ベル「同じよ?」
貴也「駄目か……」
途方にくれる一同。
馨子「もう思いつかないわ……」
クレア「うぅ……」
ベル、最後の望みをかけるかのように、
ベル「ねえ、貴也さん……区別つく?」
貴也「ボク?」
ベル「うん……」
貴也「だ、だから目をつむっちゃって……」
ベル「そうじゃなくて!」
貴也「?」
ベル「だって、フォル姉様は、貴也さんによって復元されたんだもの。
だから……貴也さんになら、分かるんじゃないかと思って……」
貴也「そんな……」
貴也、フォルたちをもう一度見つめる。
フォル「貴也さん……」
フォル「貴也さん……」
フォル「貴也さん……」
フォル「貴也さん……」
フォル「貴也さん……」
フォル「貴也さん……」
フォル「貴也さん……」
フォルたち、貴也を見つめている。
もう一度よく見てみる貴也……だが、区別できない。
貴也「……ボクにだって、分からないよ……」
ベル「もう、だらしないわね。」
貴也「そういわれても……」
困ってしまう貴也。
貴也(モノ)「フォル……」
うつむいてしまう貴也。
貴也(モノ)「何とかしてあげたいけど……どうすれば……」
クレア「そうだわ!」
クレア、ひらめく。
クレア「記憶! 記憶が違うはずよ?」
一同「あ!」
クレアの考えに気づく一同。
クレア「新しく復元したんだから、本物以外は少し前のことでさえ
知らないはずだわ!」
馨子「なるほどね!」
ベル「じゃあ、いままで起こったことを思い出してもらえば……」
リア「思い出せたアネキだけが、本物のアネキだってこと!」
一同、フォルたちを見る。
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
フォル「ん……」
ちょっと困っている様子のフォルたち。
フォルたちを見る一同。
貴也も、期待してフォルたちを見つめる。
貴也(モノ)「これで、本物のフォルが分かるかも……」
フォルたち、おどおどして、お互いを見回している。
クレア「無駄よ、無駄。いまさら考えても、もう遅いわ?」
勝ち誇ったようなクレア。
クレア「いまさら記憶のコピーなんて出来やしないんだから。」
それでも、見回しているフォルたち。
と、フォルたち、ふと振り向いて、みんなの方を向く。
貴也「?」
フォルたち、みんなそれぞれの方向を向いている。
双子たち、それぞれフォルの一人に見つめられているのに気づく。
ベル&リア「え?」
メルとミリも、自分が見つめられているのに気づく。
メル&ミリ「な、なに?」
そして馨子も、フォルの一人に見つめられている。
馨子「あ、あの……」
貴也、その様子に気づいて、
貴也(モノ)「一人ずつ……見てる?……」
フォルたち、それぞれのキャラをじっと見詰めている。
クレアはその様子に気づいてないようで、
クレア「さーて、答えてもらおうかしら?」
クレア、フォルたちをじろりと見つめて、
クレア「これで、間違いなく偽物が分かるわよ!」
と、一人のフォルがクレアに近づき、
フォル「くすくす……さあ、どうでしょうか?」
クレア「ん?」
フォル「クレア姉様には区別できないかもしれませんね?」
クレア「え?」
フォル「だって、あのディスク……偽物だとは気づかなかったのですから。」
クレア「うっ!」
クレア、さきほどの失態を指摘され、動揺してしまう。
クレア「フォ、フォル……」
と、二人目のフォルがベルに近づき、
フォル「ベル?」
ベル「は、はい?」
フォル「うふふ。新しい部屋割りは、私と相部屋にしましょうね。」
ベル「え?」
フォル「そうすれば、どんな時だって、離れ離れになることはありませんもの。」
ベル「あ……」
ベル、心を見透かされたような気がして動揺してしまう。
ベル「フォ、フォル姉様……」
と、三人目のフォルがリアに近づき、
フォル「リア?」
リア「あ、え?」
フォル「あなたのその髪の似合う服を選んであげますね。」
リア「え?」
フォル「うふふ……長い髪にも、きっと似合うように、ね?」
リア「あっ…」
リアも、心を見透かされたような気がして、動揺してしまう。
リア「ア、アネキ……」
と、四人目のフォルがメルに近づき、
フォル「メル?」
メル「な、なに?」
フォル「お役に立てるのでしたら、私が替わりに、して差し上げますよ?」
メル「え?」
フォル「私があなたの望み通りに、その‘役’をできるかは分かりませんけれど……」
メル「な!」
メルも、考えを言い当てられたような気がして、動揺してしまう。
メル「フォ、フォル……」
と、五人目のフォルがミリに近づき、
フォル「ミリ?」
ミリ「な、なによ?」
フォル「もう少し早く気づけばよかったですね。」
ミリ「え?」
フォル「そうすれば、あなたの思うままにデータの書き換えが
出来たかもしれませんもの。」
ミリ「うぅ!」
ミリ、さきほどの失敗を指摘され、動揺してしまう。
ミリ「だ、第三天使……」
動揺するミリ。
と、六人目のフォルが馨子に近づき、
フォル「馨子さん?」
馨子「は、はい?」
フォル「私、手伝いますから。一緒に作りましょうね?」
馨子「え?」
フォル「想いを込めた、おいしいケーキ、でしょう?」
馨子「あ、あのっ…」
馨子、心を見透かされたような気がして、焦ってしまう。
馨子「フォ、フォルさん……」
顔を赤らめてしまう馨子。
動揺する一同。
クレア「な?」
貴也「え?……今のって?」
リア「うん。さっきの……」
ベル「『フォル姉様がもう一人欲しい』って話してた時のよ?」
クレア「そ、そうなの?」
貴也「うん、すべて当たってる……」
馨子「その時のことを、みんな知ってるってこと?」
ベル「そうみたい……」
貴也「じゃ、じゃあ……」
一同、最後のフォルを見る。
最後のフォルは、部屋の真ん中で、みんなを見渡している。
貴也「もしかして……」
一同、最後のフォルを、息を飲んで見つめる。
最後のフォル、貴也を見つめる。
フォル「私がこんなにいたら、困りますよね。貴也さん……」
貴也「え?」
フォル「だって……」
息を飲む一同。
フォル「だって、湯飲みが、あと6つも必要ですもの…」
貴也「あ!」
貴也、さっきの湯飲みの話を思い出す。
貴也「フォ、フォルシーニアだ……」
一同「ああ、全員、本物だぁ!」
一同、頭を抱えてしまう。
貴也「そんな!」
ベル「どうしてなの?」
リア「どうしてアネキが全員本物なんだ?」
貴也「本物が7人もいるなんて……」
フォル、その様子を見て、
フォル「やっぱり……6つも、ないんですね……」
貴也「あ、いや、そうじゃなくて。」
クレア、頭がこんがらがった様子で、リアに、
クレア「どういうことなの?」
リア「え?」
クレア「全員、ちゃんと記憶があるってこと? 再生される前の記憶が!」
リア「そ、そんなことアタイに言われても!」
クレア「理由、分からないの?」
リア「う、えーと、えーと……」
悩むリア、だが考えが浮かばない。
クレア「まったく、役立たずだねえ。」
リア「む!」
ベル「もう、こんな時に、ケンカしないでよ。」
馨子、考えて、
馨子「ん……記憶まで復元された、ってことかしら?」
リア「あ、それ、違う。」
リア、否定して、
リア「ディスクは上書き出来ないから。」
馨子「あ、そうか。」
ベル「うん、今さっき、ここで起こったことがディスクに入っている
はずが無いわよね。」
リア「うん。だから、ディスクは関係ないと思う……」
クレア「ディスクを直した時に、余計なこと、しなかった?」
リア「しないって! 表面の傷を修復してるだけだもん! データはいじらないよ。」
ベル、『データ』の言葉に反応して、
ベル「あ、じゃあ!」
ベル、メルとミリをにらむ。
ベル「あなたたちね?」
メル&ミリ「え?」
クレア「アンタ、ディスクを盗んだ時、データに何かしたの?」
ミリ「してないもん! さっき言ったでしょ?出来なかったし、
する暇がなかったって!」
ベル「あ、そうか……」
クレア「ん……」
考えている貴也。
貴也「うーん……ディスクじゃないとすると……」
クレア「すると?」
貴也「復元の時に、記憶を本物のフォルから読み込んだ、とか?」
一同「え?」
驚く一同。
ベル「でも……フォル姉様は、部屋の真ん中にいたのよ?」
クレア「パソコンの近くにはいなかったのに、どうやって?」
貴也「う、そう言われても……」
リア「貴也は、可能性を考えただけ、なんだろ?」
貴也「うぅ」
馨子「でも……他には?」
一同「うー」
考えの浮かばない一同。
一同、自分の側にいるフォルを見つめて、
クレア「偽物なはずなんだけど……」
ベル「記憶が同じだなんて……」
リア「それに、体も同じなんだよね……」
メル「心も体もまったく同じフォル?」
ミリ「それって、全員本物ってことになっちゃうよ?」
馨子「それこそ区別付かないわよね……」
貴也「……うう、情けない……本物が分からないなんて。」
見つめられて困ってしまうフォルたち。
一同「うーむ……」(語調それぞれ)
頭を抱えている一同。
フォルたち、申し分けなさそうに、それぞれのキャラに向かって、
フォル「ごめんなさい。私たちのせいで、クレア姉様を悩ませてしまって……」
フォル「ごめんなさい。私たちのせいで、ベルを悩ませてしまって……」
フォル「ごめんなさい。私たちのせいで、リアを悩ませてしまって……」
フォル「ごめんなさい。私たちのせいで、メルを悩ませてしまって……」
フォル「ごめんなさい。私たちのせいで、ミリを悩ませてしまって……」
フォル「ごめんなさい。私たちのせいで、馨子さんを悩ませてしまって……」
フォル「ごめんなさい。私たちのせいで、貴也さんを悩ませてしまって……」
一同「あ、いやいや」(語調それぞれ)
恐縮する一同。
クレア、じれったくなって、
クレア「えーい、もう、うっとうしい!」
クレア、ばっとフォルたちの前に出て、
クレア「いままでいたフォルは誰? 『貴也に復元されて、いままで私たちと
ずっと一緒にいたフォル』、よ!」
フォル「!」
フォル「!」
フォル「!」
フォル「!」
フォル「!」
フォル「!」
フォル「!」
そう聞かれて、はっとなるフォルたち。
貴也「ああ、なるほど。」
クレア「これで、言い逃れできないわよ!」
メル「だったら、最初からそう聞けばいいのに。」
クレア「うるさいわね。」
メル「う。」
クレア「さあ、他のフォルは黙ってなさいよ? さ、誰なの?」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
答えられずにうつむくフォルたち。
クレア「?」
ベルとリア、やれやれ、とばかりに溜め息を付く。
リア「なに言ってんの?」
クレア「ん?」
ベル「貴也さんも『なるほど』じゃないわよ?」
貴也「え?」
リア「だから、全員、アネキと同じ記憶なんだってば。」
クレア「あ」
ベル「実際にそれをしていなくても、まるで自分がしたかのように
思い出してしまうってことよ?」
リア「だから、全員が、いままでずっと一緒にいたって感じているはず。」
クレア「そ、そうね…」
メル「クレアさぁん?」
クレア「ア、アンタだって間違えたでしょ?」
メル「う」
貴也「え、でも……」
一同「?」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
ところが、フォルたちは黙ったまま、誰も答えようとしない。
リア「あれ?」
クレア「え?」
ベル「どうして?」
クレア、不思議に思って、
クレア「え? いいのよ、別に。 全員、そう答えればいいでしょう?」
それでもフォルたちは誰も答えない。
おどおどしているフォルたち。
貴也「どういう事なのかな?」
クレア「ん……」
深く考えるクレア。
クレア「ひょっとして……」
一同「?」
クレア「……分かっているんじゃないかしら?」
一同「え?」
クレア「自分は本物ではないってこと……」
ベル「え? それって……」
リア「記憶が完全に一致している、というわけではない、とか?」
貴也「え、だったら……」
ベル「だったら、どうして本物のフォル姉様は答えてくれないの?」
クレア「そ、そうね……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
それでも黙っているフォルたち。
ベル「ねえ、答えて? フォル姉様!」
フォルたち、答えようとしない。
ベル「ねえ、答えて!」
悲痛に訴えるベル。
七人のフォル、お互いを見詰め合って、おどおどしている。
クレア「どうして答えないのかしら?」
不審に思うクレア。
クレア「偽物はともかく、本物のフォルが何も言わないなんて……」
それでも黙っているフォルたち。
貴也、考え込む。
貴也(モノ)「そうだよね……どうして答えてくれないんだろう。」
フォルたちを見やって、
貴也(モノ)「……言っても、困ることなんてないはずなのに。」
フォルの答を待っている一同。
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
フォル「……」
それでも答えようとしない。
メル、意地悪を言って、
メル「ひょっとして、全員偽物なんじゃない?」
一同「な!」
メル「だってそうでしょ? 答えないんだから。」
ミリ「そうよ、全員消しちゃえばいいのよ!」
リア「な、何言ってんだよ!」
ミリ「ふーんだ。」
ベル、フォルたちに訴えて、
ベル「ねえ、お姉様、本当は分かっているのでしょう?」
ふっとうつむくフォルたち。
ベル「どうして答えてくれないの?」
暗い顔のフォルたち。
ベル「どうして?」
貴也、考え込む。
貴也(モノ)「どうして……」
フォルたち、暗い顔でうつむいている。
貴也「!……」
貴也、思い出した様子。
貴也「もしかして……さっきの……」
○貴也の回想
フォル「消える?……」×7
動揺して、うつむいてしまうフォルたち。
フォル「私が……消える?」×7
貴也、動揺するフォルたちに気づく。
貴也「フォル……」
○回想終わり
貴也(モノ)「あれって……」
ベル「ねえ、貴也さんも、何か言ってあげて?」
貴也「え?」
ベルの言葉で回想を打ち切られる貴也。
貴也「何かって……どういえば……」
貴也、何を言えば分からず、戸惑っている。
寂しそうに貴也を見つめるフォルたち。
貴也「う……」
何も言えないままの貴也。
フォルたち、貴也に訴えて、
フォル「私たち、消されなくては……いけないのですか?」
フォル「私たち、消されなくては……いけないのですか?」
フォル「私たち、消されなくては……いけないのですか?」
フォル「私たち、消されなくては……いけないのですか?」
フォル「私たち、消されなくては……いけないのですか?」
フォル「私たち、消されなくては……いけないのですか?」
フォル「私たち、消されなくては……いけないのですか?」
貴也「!」
はっとさせられる貴也。
貴也「フォル……」
貴也、決意し、フォルたちに向かって、
貴也「ううん、消えなくてもいい!」
フォル「え?……」
フォル「え?……」
フォル「え?……」
フォル「え?……」
フォル「え?……」
フォル「え?……」
フォル「え?……」
貴也「ずっと、いてもらっても構わないよ! 一緒に住もうよ。」
一同「えぇ?」
驚く一同。
クレア「ちょ、ちょっと、何言ってるのよ!」
馨子「あきれた。」
ベル「貴也さん、反対してたでしょ?」
貴也「え?」
リア「アタイたちが、『もう一人欲しい』っていってた時!」
ベル「フォル姉様は一人でいいって。」
貴也「あの時はそう言ったけど……今は事情が違うよ。」
貴也、フォルたちを見つめて、
貴也「同じディスクから復元されたんだから、決して偽物じゃない。
全員同じフォルなんだ!」
フォル「同じ…『私』?」
フォル「同じ…『私』?」
フォル「同じ…『私』?」
フォル「同じ…『私』?」
フォル「同じ…『私』?」
フォル「同じ…『私』?」
フォル「同じ…『私』?」
貴也「うん。それなのに消えてくれと言われたら、誰だって戸惑うさ。
消される方だって、……消えるのを見る方だって、
きっと悲しくなってしまうから。」
一同「あ……」
はっとする一同。
だが、クレア、反対して、
クレア「だって、確かに偽物なのよ?」
貴也「で、でも。」
クレア、貴也を疑って、
クレア「アンタ、区別が出来ないから、言っているだけなんじゃないの?」
貴也「そ、そんなことないよ。」
クレア「区別、つくの?」
貴也「う……」
クレア「ほらごらん?」
貴也「そうだけど、でも!」
クレア「?」
貴也「区別、付かないんだよ? 少なくとも体の方は。」
クレア「?」
貴也「だから……同じフォルなんだから……」
貴也、クレアに、そして一同に訴えて、
貴也「他のフォルを消せるということは、
本物のフォルも消せることになってしまうじゃないか!」
一同「あ!」
貴也「だから、消えて欲しくないよ! 『本物のフォルが消えてしまえる』なんて、
考えたくないもの!」
一同「あ……」
気づかされる一同。
フォル「貴也さん……」
フォル「貴也さん……」
フォル「貴也さん……」
フォル「貴也さん……」
フォル「貴也さん……」
フォル「貴也さん……」
フォル「貴也さん……」
頬を紅潮させているフォルたち。
貴也「そんな悲しい思いを……させたくないよ……」
一同、貴也の言葉に納得している様子。
ベル「そっか、だから……だから『自分が本物だ』って言わないのね?」
馨子「他のフォルさんを消させたくないから……」
リア「わざと……だったんだ。」
貴也「うん。そうだよ、きっと。」
貴也、フォルたちを見つめて、
貴也「だから、納得がいくまで、ここにいてもらってもいい。
いずれは消えてもらわなくてはいけないかもしれないけれど、
とにかく今は、気が済むまでいてくれていい!
本物のフォルだったら、何人いても構わないんだから。」
フォル「貴也さん、私……」
フォル「貴也さん、私……」
フォル「貴也さん、私……」
フォル「貴也さん、私……」
フォル「貴也さん、私……」
フォル「貴也さん、私……」
フォル「貴也さん、私……」
貴也「うん。」
答えてうなずく貴也。
クレア「確かに、そうね……」
納得した様子の一同。
ベル「フォル姉様が消えてしまうなんて……私……」
リア「そんなの、だめだよ!」
馨子「うん、いやよね、そんなの……」
ところが、ミリ、貴也を疑って、
ミリ「ホントは、第三天使と相部屋したいから、だけなんじゃないの?」
双子「む!」
再び白い目で貴也を見る双子たち。
双子「たかやさぁん?/たかやぁ?」
貴也、ひるむことなく、真剣に、
貴也「だったら、ボクは玄関でも台所でも野宿でも構わないから。」
ミリ「え?」
驚くミリ。感心するベルとリア。
リア「ふーん、覚悟は出来ているわけだ。」
ベル「貴也さんがそこまで言うのなら……」
考える双子たち。
ベル「ずっと、というのはともかく、しばらくなら、
一緒に住んでも問題ないかも……」
リア「フォル姉様にも納得してもらえるまでなら…ね。」
貴也「うん。」
分かってもらえて、喜ぶ貴也。フォルたちに向かって、
貴也「フォル、安心して? 消えなくてもいいから。」
フォルたち、顔を明るくして、
フォル「よろしいんですか? 貴也さん……」
フォル「よろしいんですか? 貴也さん……」
フォル「よろしいんですか? 貴也さん……」
フォル「よろしいんですか? 貴也さん……」
フォル「よろしいんですか? 貴也さん……」
フォル「よろしいんですか? 貴也さん……」
フォル「よろしいんですか? 貴也さん……」
貴也「もちろんだよ。消えなくてもいい。みんな、本物のフォルだよ?
だから、一緒に住もうよ。」
安堵の笑みをもらすフォルたち。
フォル「お優しいんですね……」
フォル「お優しいんですね……」
フォル「お優しいんですね……」
フォル「お優しいんですね……」
フォル「お優しいんですね……」
フォル「お優しいんですね……」
フォル「お優しいんですね……」
貴也に感謝するフォルたち。
フォルたちの笑顔を見て、安心する貴也。
貴也「うん。」
貴也、ふと、うつむいて、
貴也(モノ)「区別できないのは情けないけど……」
貴也、フォルたちの表情を見つめる。
貴也(モノ)「でも、しかたないよね。今は、フォルを……
フォルたちを悲しませたくない……。それが大事だから。」
フォルたち、確かめるかのように、貴也の顔をじっと見つめている。
貴也、フォルたちに優しくうなずいてあげる。
貴也「うん。」
フォルたち、互いに顔を見合わせる。
フォル「ん…」
フォル「ん…」
フォル「ん…」
フォル「ん…」
フォル「ん…」
フォル「ん…」
フォル「ん…」
お互いにうなづくフォルたち。
そして、貴也に向かって、晴れやかに笑って、
フォル「ありがとう、貴也さん。」
フォル「ありがとう、貴也さん。」
フォル「ありがとう、貴也さん。」
フォル「ありがとう、貴也さん。」
フォル「ありがとう、貴也さん。」
フォル「ありがとう、貴也さん。」
フォル「ありがとう、貴也さん……」
晴れやかに笑うフォルたち。
貴也「え?……」
貴也、はっと気づく。その中に一人だけ……
貴也「そ、そんな……」
貴也、その中の一人を見つめる。
『晴れやか』に微笑むフォルの中に、
ただ一人だけ『悲しい笑顔』で微笑むフォル。
貴也「フォルシーニア……」
貴也、そのフォルに釘付けになる。
フォル「え?」
貴也の様子に気づくフォル。
貴也、そのフォルを見つめて、歩き出す。
一同「?」
貴也の様子に気づく一同。
貴也、フォルたちの間を通り、そのフォルの前に立つ。
フォル「貴也さん?」
貴也「……君が、フォル……だね……」
フォル「え?」
驚くフォル、貴也の顔を見つめて、
フォル「私の事……お分かりになるんですか?」
貴也「…………」
手を伸ばす貴也。
それに応えて、フォルも手を伸ばす。
フォル「貴也さん……どうして?……」
手のひらをあわせて、見詰め合う二人。
貴也「……フォルのこと、いままでずっと、見てきたから……」
フォル「貴也さん……」
フォル、顔を赤らめる。
見詰め合う二人……
貴也「フォル……」
フォル「貴也さん……」
見詰め合っている二人。それを見る一同。
馨子「!」
と、馨子とリアが止めに入る。
リア「ちょ、ちょっと!」
馨子「何、見詰め合ってんのよ!」
貴也「え?」
フォル「あ……」
はっと正気に帰る二人。慌てて目をそらす。
フォルはまだ顔を赤らめている。
馨子「もう……」
リア「……」
機嫌の悪そうな馨子。……リアも。
ベル、感心して、
ベル「よく分かったわね、貴也さん。」
貴也「……うん……」
ベル「どうして分かったの?」
貴也「『どうして』って……」
答に詰まる貴也。
ベル「理由、あるんでしょう?」
貴也「……」
貴也、フォルを見つめる。
フォル「?」
貴也、目をそらして、
貴也「他のフォルとは違ったから……」
一同「?」
貴也「……」
貴也、うつむいて、
貴也「本物のフォルだけは、いつも見ていたフォルだったから……」
フォル「……」
貴也「……いつも見てきた『笑顔』だったから……」
フォル「!」
フォル、はっと気づいて真っ青になり、目をそらしてしまう。
貴也「いままでずっと見てきた『笑顔』だったから……」
フォル「貴也さん……」
うつむいてしまう二人。
貴也「……」
フォル「……」
だが、もう一度確かめるように互いの顔を横目で見つめる。
貴也、フォルの姿を横目で見つめて、
貴也(モノ)「ずっと見てきた…。いつだって、そうだった…。
あの『悲しい笑顔』……。見ているだけで、悲しくなるような微笑み……」
残念そうな貴也。
貴也(モノ)「その『悲しい笑顔』をして欲しくなくて、言った言葉だったのに……」
貴也、フォルの表情をそっと覗き見る。
貴也(モノ)「フォル……」
フォル、顔を背けてしまう。
フォル(モノ)「伝わって…しまったんですね…………」
胸を押さえるフォル。
フォル(モノ)「きっと今、その顔をしてしまったのは『私』だけ……」
うつむくフォル。
フォル(モノ)「私には消えられない理由があるから……
果たさなければならないお役目が……」
つらそうに耐えているフォル。
フォル(モノ)「消えたくても消えられない、逃れたくても逃れられない、
…そのつらさを知っているのは、本物の『私』だけですもの……」
フォル、貴也の姿を横目で見て、
フォル(モノ)「それを…貴也さんに見透かされてしまったみたい……」
「フォル2:役のフォルシーニア」へ進む
目次へ戻る