医者「それではお大事に・・・」
そう言い残して医者は英荘を後にした。
今、巷ではインフルエンザが大流行している。
そしてそれはこの英荘でも猛威を振るっていた。
貴也、ラオール、ジゼルの3人がインフルエンザにかかったのだ。
それが発覚した時、英荘は上へ下への大騒ぎになった。
とりあえずリリアナが医者を呼んだことでその騒ぎは一段楽したのだが。
そして今はリビングで今後の対策を練られていた。
リリアナ『とりあえず医者が言うには‘ワクチンと坑ウィルス薬を打っておいたので大事にはいたらないだろう’とのことです』
ほー
あちこちで溜息が漏れた。
クレア「安心するのはまだ早いわよ。いくら薬を打ったからと言っても、ちゃんと看病をしないと死ぬことだってあるんだから」
フォル「まぁ・・・」
リア「そんな・・・貴也が死ぬだなんて・・・。そんなことになったらアタシ・・・」
ミリ「ジゼル姉ちゃん・・・」
ラム『こらこら、看病しなかったらだよ』
隣で暗くなった2人をラムがたしなめた。
ミリ「でもクレアなら病気もぱぱっと治せるんじゃないの?」
クレア「Psiを用いて自然の理を捻じ曲げる様な行動は禁止されているのよ(リリアナにね・・・)」
ラム『でも、ジゼルの目は治したじゃない』
クレア「あれはジゼルが素因だったし、Psiでなければ治せなかったから、特別な事なのよ
」
ミリ「でも、もしも誰かが死んじゃったらどうするのよ!」
フォル「ミリ。‘そう’ならない様にするために看病するのですよ」
クレア「でも問題が1つあるわ」
ベル「なに?」
クレア「この中には看病経験のある者が1人もいないということよ」
一同「・・・・・・」
メル「そうよね・・・。Lalkaの中で唯一看病経験のあったセフィもここにはいないしね・・・」
セフィは保育園で子供の看病をしたことがあるのだ。、
しかしそのセフィは昨日からインフルエンザにかかって熱を出している馨の看病に行っていて英荘にはいない。
ベル「ラムは経験ないの?」
ラム『ケガの治療は何度もしたことあるけど、病人の看病はしたことはないな・・・』
フォル「大丈夫ですよ。みんなで知恵と力を出しあえば、きっと3人を救うことも出来ますよ」
クレア「とりあえず知識を総動員し、手分けして看病にあたるわよ」
一同「おーー!!」
ラム『ボクもバイトを休んで看病したいけど、店長がインフルエンザでどうしても人手が足りないって言うから・・・』
フォル「大丈夫ですよラム。ここはわたし達にまかせて、あなたは店長さんを助けてあげてくださいな」
ラム『う、うん・・・。じゃあなるべく早く帰ってくるようにはするから・・・』
リリアナ『ではついでにセフィネスの様子も見てきてあげてください』
ラム『分かったよ。じゃあ行ってきます。3人のことは頼んだよ!』
一同「いってらっしゃい」
ラムは後ろ髪を引かれつつも英荘を後にした。
リリアナ『ではそれぞれの受持ちを決めます』
リア「アタシ、貴也の看病する!」
ミリ「アタシ、ジゼル姉ちゃんがいい」
すかさずリアが名乗りをあげ、次にミリが名乗りをあげた。
リリアナ『クジを作っておきましたからこれを引いて決めませんか?』
クレア「そうね、そのほうが公平でいいわね」
リア「えーーー」
リリアナ『それとフォルシーニアは引かなくてもいいですよ』
フォル「何故ですかリリアナ?」
リリアナ『英荘の家事もおろそかにするわけにはいきませんからね。アナタは家事と病人食係です』
フォル「わたしも看病したかったですけど・・・・・・分かりました・・・」
少し寂しそうな顔をしてフォルは答えた。
リリアナ『別に看病するなというわけではありませんよ。家事をしながら3人の様子を見て周っても構わないのですからね』
フォル「はい。そうですよね」
その一言でフォルの顔に明るさが戻った。
リリアナ『では誰から引きますか?』
一同を見渡すりリアナ。
皆、周りの顔と見合う。
ミリ「じゃ、アタシから。どれにしようかな・・・えい!。あ、貴也だ」
リア「え!」
ミリ「ま、ラオールじゃないからいいか」
リア「ミリっ!!アタシにそれを譲って!!」
ミリ「ええ!」
リアがミリの手を握りながらすごい剣幕で詰め寄った。
ベル「ダメよリア。ちゃんとクジを引かないと」
そう言いながらベルがミリからリアを引き剥がした。
リア「だってぇ・・・」
ベル「まだ貴也さんの当たりも1つ残ってるから」
リア「うん・・・」
しぶしぶリアは引き下がった。
ベル「じゃ、次はリアが引く?」
リア「・・・ううん。ベルが先に引いて」
ベル「いいの?じゃ、先に引くわね」
リア「でも貴也のクジ引いたら恨むからね・・・」
ベル「無理言わないでよ・・・。えい!あ、ラオールくん」
リア「ほ・・・」
クレア「次はワタシね。よっ・・・ジゼルね」
リア「ふぅ・・・」
メル「リアちゃんどうする?アタシが先でもいい?」
次に引こうとしていたメルがリアに聞いてきた。
リア「え、あ、うん・・・」
メル「じゃあ・・・」
リア「あっ、ま、待って」
メル「ん?」
メルはクジを掴んだ指を引っ込めた。
リア「やっぱりアタシが引く・・・」
メル「ふふ、じゃあどうぞ」
リアに場所を譲るメル。
リア「・・・」
真剣にクジを見詰めるリア。
リア(確率は3分の1・・・)
一同、固唾を飲んでリアを見守る。
リア(どうか貴也のクジが当たりますように!!)
あまりに強く想うのでみんなには丸聞こえである。
リア「・・・・・・えい!」
引く瞬間に目を瞑りながら思い切って引いた。
おぉーー
歓声があがる。
リア「え・・・」
恐る恐る目を開けて手の中のクジを見てみると。
リア「あ、貴也だ・・・」
思わず目に涙がにじんでくるリアだった。
ミリ「泣くほどのことかな・・・」
ベル「よかったわねリア」
リア「うん。うれしいよぉ・・・」
リアは泣きながらベルに抱きしめられた。
メル「しかしリアちゃんの想いってほんとにすごいわね・・・」
リリアナ『さぁメルキュール。アナタの番ですよ』
メル「あ、はいはい。それじゃ・・・お、ラオールね」
フォル「ということはリリアナはジゼルですね」
リリアナ『そうですね。では皆さん、人の命と地球の未来もかかっています。精一杯看病してくださいね』